番外編、全四話の公開が完了しました。読んでくださった方、ありがとうございました。
少し裏話を。
この番外編を書こうと思ったのは、本編を書きながらずっと気になっていたことからです。紬は蕎麦を守ろうとしているのに、つゆのことを何も考えていない。そのモヤモヤが出発点でした。
父のレシピが誰にも残っていない、という設定は最初からありました。ただ、それをどうやって取り戻すか。蕎麦と違って、つゆは「形が見えない」。その難しさを耕二さんに語らせながら、答えを「田中さんの体の記憶」に置いたのは、我ながらうまくいったと思っています。
出汁の話はかなり調べました。羅臼昆布のマンニット、本枯れ鰹節と宗田鰹の組み合わせ、返しを寝かせる理由。調べているうちに田中さんが「もう一種類何か使ってた気がする」と言い出す場面が生まれました。料理の取材って、こういう発見があるから楽しい。
第四話、耕二さんの「教えなかったんじゃなくて、教えられなかったんだ」というセリフは、書いているうちに自然に出てきた言葉です。これが言いたくて四話書いたのかもしれない、と後から思いました。
田中さんが「これだ」と言う場面は、何度書き直しても短くなりました。余計なことを書かない方がいい、と判断しましたが、それが正解だったかどうかは読んでくださった方に聞いてみたいところです。
『つむぎのそば』はこれにて完結です。本編・番外編すべてお付き合いいただいた方、本当にありがとうございました。紬と別府の街が、少しでも皆さんの記憶に残ってくれたら嬉しいです。
引き続き、八雲海の作品をよろしくお願いします。