俺様はその日、非常に調子が良かった。
空は青く、風は俺様の美しい羽を優しく撫で、世界は当然のように俺様を中心に回っていた。
「ふははははっ……! 今日も俺様、最強にキマりすぎだぜー!」
地面に描かれた、明らかに怪しい魔法陣を見るまでは。
円。
模様。
うっすら光ってる。
「……これは……試練だな」
違う、違う。これは“選ばれし俺様”だけが踏める、運命の儀式だ。
俺様クラスになると分かるんだよ、これが罠なんかじゃなくて、
きっとすげぇご褒美か、俺様のカリスマが爆発するイベントだってな!
「よぉ~し行くぜぇぇぇ!!」
次の瞬間。
バチィィィン!!
「ぎゃあああああああああああぁぁぁ!?!?」
視界がひっくり返り、気づけば俺様は完璧に宙吊り。
網。ロープ。芸術的なまでの罠。
「ちょ、待て待て待て待て待てぇぇ!!
聞いてねぇぞ!! こんな展開聞いてねぇ!!
俺様がこんなみっともない姿になるわけねぇだろがぁぁ!!」
羽をばたつかせても網はびくともしない。
むしろ食い込んで痛ぇ。
「……くっ、冷静になれ俺様。これは……一時的な、演出だ」
そのとき。
グゥゥゥ~~~~~~~~
腹が、盛大に鳴った。
「……」
もう一度、盛大に。
「……くそぉぉ……」
空腹は、思考力を奪う。
誇りも奪う。
判断力も、威厳も、俺様の全てを根こそぎ奪うクソ野郎だ。
「誰か……来い……
いや、来なくていい、俺様はこんなことで助けなんか求めねぇ……
……でも来いよぉぉ……誰でもいいからぁぁ……」
そうして情けない声で叫び続けていたその後。
人間が一人、こちらを見上げて立っていた。
——第一印象?
……まあ、悪くねぇな。
貧相な服。頼りなさげな目つき。けど……目が、妙に冷静だ。
俺様はそのとき、こう確信した。
こいつ……使える。
この俺様をこんなみっともない状態で見ても、動揺せずに観察してやがる。
使える。絶対に使えるぞ、こいつ。
後に俺様の相棒になる男との出会いは、
こうして、史上最高にダサく、情けなく、みっともなくて、
……でも、最高に運命的な形で始まったのだった。