春は素晴らしい。 鼻孔をくすぐる沈丁花の香りに弾む君の笑顔を、桜が讃える。 夏が待ち遠しい。 僕の名を呼ぶ君の声に、蝉時雨も蚊帳の外へと消える。 秋が待ちきれない。茜色の空を眺める君は灯火のように儚く、美しい。 冬は 「お前、何気持ち悪い文章書いてんの?」 はんじょう!? え、どうして?いつの間に? 「いや、ここ楽屋だろ。台本読んでんのかと思ったら気持ち悪りぃ。春だの夏だの、お前引きこもってるから分かんねえだろ。」 はんじょう、それは文学に対する冒涜だよ。 「好きな子でも出来たのかよ。」 そ、それは。 「まぁいいや。ほら、リハーサルの時間だから行くぞ。」 楽屋から去る背中に言葉は出ず、溜め息と共に紙は丸めて窓から投げ捨てた。 春風に乗り紙屑は青空を舞う。 2人の恋の行方は、捨てられた紙屑はどこへ向かうのか。 おにやの本当の気持ちを唯一知る紙屑にもその行方は分からない。 冬は忘れない。はんじょう、君が産まれた季節だ。
こんにちは。 作者のMIZUNAです。 作品に頂ける★や作品フォローはとても励みになっております! 作品が面白い、続きが気になった場合は頂ければ幸いです。 応援コメント、レビューもお待ちしております! お気軽にご記載下さい! 【お知らせ】 2022年7月8日付、第10回ネット小説大賞にて小説賞受賞に伴い、2022年10月8日にて書籍が発売決定!! 書籍が2022年10月8日にて発売致します。 現在、TOブックスオンラインストア様にて予約受付中です!! ※コミカライズに関しては現在進行中。 近況ノートに書籍の表紙イラストを掲載致しました。 作品がより楽しく、面白くなること間違いありません。 是非、ご覧ください!! 敬具
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