京都・五条坂で人形の顔を彫る職人の話を書いています。
『おもてなし』というタイトルで連載を始めました。
第三話まで公開中です。
主人公は三代目の頭師(かしらし)。人形の頭――顔の部分だけを桐から彫り出す専門の職人です。手足は手足師が作り、髪は髪付師が植える。京人形はそうやって分業で仕上がります。
その工房の棚に、彫りかけの頭が並んでいます。
胡粉を塗っただけの、目も入っていない白い顔。
そのうちの一つが、夜になると揺れるんです。
昼は静か。人がいる間は動かない。
けれど日が暮れて、主人公が一人きりになると、かた、かた、と台座の上で左右に振れ始める。日を追うごとに揺れは大きくなっていく。
主人公はこの現象を誰にも説明できずにいます。木に意志があるはずがない。頭師として、そんなことを認めるわけにはいかない。けれど毎晩それは起きる。
この話にはもう一つ、軸があります。
主人公の妻は一年前に亡くなりました。穏やかで、流暢な京言葉を話す人だった。
ところが妻の死後、私立探偵が調べたところ、彼女の戸籍は偽造されていた。本籍地の番地は架空。出生届は後付け。
彼女はどこから来たのか。何者だったのか。
そしてなぜ、あの完璧な京言葉を話せたのか。
職人街の日常と、棚の奥で揺れる頭と、亡き妻の嘘。
この三つが、ゆっくりと一本の線に繋がっていきます。
京都の空気が好きな方。
職人の仕事の手触りが好きな方。
派手に驚かすのではなく、じわじわと背中に貼りつくような怖さが好きな方。
たぶん合います。
▼第一話はこちら
https://kakuyomu.jp/works/2912051595187930330/episodes/2912051595187963125
三話まで公開済みなので、まとめて読めます。
感想いただけたら、とても嬉しいです。