「きゃぁぁぁ!!!! や、やめ……!! 誰か助けてぇぇぇぇ!!!」
甲高い悲鳴が、灰の森を裂いた。
「……!」
エリシアは即座に地を蹴った。
灰が爆ぜる。腐った落ち葉が宙へ舞い、彼女の白い影が木々の間を一直線に駆け抜けた。枝が視界を塞ぐより早く身を沈め、倒木を踏み台にし、湿った根を蹴ってさらに加速する。
声の発生源には、すぐに辿り着いた。
開けた場所。
灰を被った地面の中央で、一人の女性が逆さまに吊り上げられている。足首に蔓が巻きつき、その身体を宙で揺らしていた。
「ひ、ひゃっ……! だ、だめです、私、あまり美味しくないと思います! たぶん! 自己評価ですがぁぁ!」
女性は必死に身体をくねらせながら、叫んでいる。
衣服はひどく傷んでいた。袖は裂け、裾はところどころ千切れ、腹のあたりには大きな破れがあって、へその見える肌に青黒い痣が散っている。腕にも脚にも細かな切り傷があり、血ではなく薄い魔力の滲みが肌の上で淡く光っていた。
人間ではない。
ホムンクルスだ。
エリシアは一目でそう判断した。
蔓を辿った先に、巨大な植物型の魔物がそびえていた。
太い根が地面を割って這い、幹は肉のように脈打っている。花弁は赤黒く開き、その中心には花芯の代わりに大きな口があった。ぎちぎちと噛み合わされる牙は、獣のものに近い。だが唾液のように滴る粘液は、植物の蜜にも似ていた。