それは厚い鉄扉だった。表面は錆び、亀裂が走り、蝶番も歪んでいる。朽ちかけた鉄の塊にしか見えない。けれど、扉の中央に刻まれた封印紋だけは、まだ死んでいなかった。
淡い光が、呼吸するように脈打っている。
「……やっぱり思った通りだ……!」
声が弾んだ。
抑えようとしてもできなかった。何年も、何年も探してきたものが、今、目の前にあるのだから。
僕は胸ポケットに手を入れ、古びた一本の鍵を取り出した。
ゆっくり鍵穴へ差し込むと、錆びついた内部で、重く噛み合う感触があった。
ガチャリ。
解錠の音が、廃城の底に落ちた。
僕は両手で扉を押す。
ゴゴゴゴゴ──。
足元から這い上がるような重低音が、城の奥まで伝わっていく。枠の隙間から砂埃がぱらぱらと零れ、何十年、何百年分かの沈黙が、少しずつ剥がれていった。
鉄扉は軋みながら、ゆっくりと口を開く。
その向こうにあったのは、牢だった。
一歩、足を踏み入れた瞬間、空気が変わった。
城の他の場所よりも冷たく、重い。壁は厚く、鉄格子には幾重もの術式が刻まれている。床には封印陣の名残があり、崩れた天井から落ちた石片が、その線をところどころ埋めていた。
閉じ込めるためだけに作られた部屋。
逃がさないためだけに残された場所。
僕の靴底が、床の破片を踏んだ。
コツ、コツと乾いた音が牢の中に響く。
もっとも奥。見るからに頑丈そうな牢屋の中心に、一人の少女がいた。