雀の私には楽しみが1つある。それは人間を観察することだ。
都会に暮らしていると、いつも大勢の人間が眼下を通り過ぎていく。
人間の羽毛は実に多彩だ。雀の私も感服するくらいにはバリエーションに富んでいる。驚くべきことに、人間の目には雀の羽毛がみな同じに見えるらしい。まあ私も他の鳥どもの羽毛はみな同じように見えるから、そんなものなのかもしれない。
それはさておき、私は人間の羽毛を観察するのを毎日の日課にしている。
今は寒いから人間の羽毛も分厚く全身を覆っている。
暑くなると羽毛は薄くなり、脚の羽毛が禿げていることも多い。
季節で羽毛が変わるのは人間も雀も変わらないのである。
頭の羽毛にも多種多様な形態がある。
羽毛の量が多かったり少なかったり、長かったり短かったり、我々の嘴のように突き出していたり、禿げていたりと様々で眺めていて飽きない。
何より特筆すべきはその色彩の多様さである。どの個体を見ても様々な色の羽毛が生えていて、同じ色の組み合わせは一つとしてない。とても同じ1種類の生物の羽毛とは思えない。
私が思うに、人間というのは個体変異が非常に激しい動物なのではないか。
人間を襲って食べる動物はいないと聞く。生存のために隠れたり逃げたり、交尾相手を探すといったことをしなくてよくなったことで、生存と関係ない方向に進化が進んだ結果、個体ごとに様々な変異が生まれるようになったのではないだろうか。
まったく興味の尽きない生き物である。