『世界は一人では背負えない』主人公紹介――強いけれど、放っておけない騎士
今回は、『世界は一人では背負えない』の主人公、ヴァルド・グランベルクについて、少し紹介したい。
黒い重装鎧をまとい、長剣と炎で戦う《焦熱の騎士》
剣の腕も、炎の力も、並外れている。強敵を前にしても怯まず、誰かが危険に晒されていれば、真っ先に前に出る男。
戦っているときの彼は、とても頼もしい。
剣術や状況判断に関する能力としては、長剣に鎧ごと断ち切る高熱を与える《光熱剣》、跳躍して空中で背後から首を刈る《雷燕》、一瞬の手付きで鍔迫り合いの体勢から喉を狙う《晴雷差し》、凄惨な戦いを生き延びるために身につけた相手の行動を読み切る《第六感》などがある。
炎術としては、大規模な火炎流を起こす《大火の渦》、単純な高火力の火球である《爆炎》、傷を焼いて無理やり止血する《焼き入れ》、辺りを温める《擬似太陽》、焚き火を起こすための《火種》、そして全てを燃やし尽くす核爆弾のような巨大な炎を発生させる《PNF-プライマル・ノヴァ・フレア》などがある。
状況に対応した最適な手札を考えながら、一挙手一投足全てを致命打として放つ、生真面目すぎる騎士だ。
彼には、かつて己が背負うはずだった騎士の国グランベルクがあった。愛した親が居た。しかし、それを奪われたのだ。聖鉄統一国家を名乗る世界最大の帝国、暴虐の侵略者・ヴィズレニアと、その独裁王アガレスに。
ヴィズレニアからすれば彼は恐ろしい。単騎で正面から突撃してくる愚者。しかしあらゆる攻撃をものともしない不死としか思えない男。力で全てを壊していく破壊者。戦争の原則からすれば、有り得ない相手だ。しかし、彼はそれを現実にする。
彼はその正義を持って、かつて約1万8千のヴィズレニア兵を斬り、焼いた。
そして、その強大すぎる鏖殺の末に、彼はやっと死に場所を得た…はずだった。しかし、砂漠の女戦士・ザハラが、彼を介抱し、生かす。
以後、彼にも仲間が、理解者が出来ていく。それにより、彼は徐々に人間性を取り戻し、自分が何を成したいのかを言葉にしていく。
しかし彼は親愛を、友愛を、自分が止まる理由にはしない。誰かからの愛を、自分が生きて良い理由にはしない。
戦わず、正義に殉じず、復讐を果たさぬ理由にはならない。剣を失い、理不尽な相手に遭遇しても、闘いをやめる理由にはならない。他人を愛そうとも、自分は愛される資格がない。理不尽で、より大きな理不尽を壊す。世界を壊すために、自分をまず先に燃料にすべきだ。正義が分からなくなっても、今、善いと思うことを選んでいく。畑仕事が忙しそうなら、手伝ったほうが善い。気まずくても、恩師には顔を出す。一度お互いの思想を議論すれば、それはもう最高の友達。大切だから、遠くで幸せに生きてほしい。
そうずっと考えている、強くて優しいのに、どこか不器用すぎる男が主人公の作品である。