若い時になんとなく買ってみた一粒ダイヤのネックレス。
もう大人だからダイヤ一つくらい持ってもいいんじゃないかって思ったんだけど
二十歳あたりで着けてたときは、何だか違和感があってすぐに着けなくなった。
0.1カラットはペンダントとして身に着けるにはシンプルすぎる気がしたのと、なんだかおばさん臭い気がして。
ノーブランドだけど、今にしてはそこそこのお値段。
あの頃は人生で一番稼いでたと言っても過言ではない。
それからそのダイヤはしばらくの時をタンスの中で過ごす。
そして20代後半、なんとなく引っ張り出してつけてみると何だか肌に馴染む。
すでに貧乏が身に沁みた私にとってはそのダイヤが
身につけているもので一番高いものになる。
ダイヤが誕生石の私は思う
「ダイヤのように硬い意思を持った、自立した女になる」
そう唱えながら、最愛の人に捨てられた私はダイヤを身に着ける。
「強くなりたい」
その頃から、私はもはやそのネックレスしか身に着けなくなる。
貧相な私が着けるダイヤ。きっと安物のガラスにしか見えないのだろうけど
誰にも気づかれなくても、ダイヤを身に着けることで自分を奮い立たせた。
時が経ちくすんだ相棒はいつしかチェーンが切れてしまい、また暗いタンスの中へ眠らされる。
✴✴✴
環境が、変化した。
私はもう1つ、小さなダイヤの集まったネックレスを手に入れた。
私は考え方を大きく変えた。
切れたチェーンを直し、綺麗に拭き上げ、再び身に着ける。
おかえり、相棒。私のダイヤ。
「…ねえ、それってダイヤだよね?」
「…誰かからプレゼントされたの?」
「…とっても綺麗だね」
「…失礼だけどいくらだったの?」
「…煌めきが違うからすぐわかるよ」
あからさまと言えばあからさまだけど
その光に気づいてくれる
「買ったのはもう10年前くらいだよ、芯の強い女になりたくてさ」
そう茶化して苦笑する。
今まで見向きもなれなかったその光に。
やっと自分の光をみつけ、その煌めきに気づいてくれる。
金と銀のその2つのダイヤ達は柔らかな日差しの中でキラキラと私を見つめている。
白く肌理の整った肌にきりりと眉を書き、唇を朱に染め、頬にしっかりと紅を乗せる。
さあ、今日も、私は美しく強い女として生きていくのだ。