初めてかもしれない
母が亡くなる夢なんて。
父と妹と私と三人で弔問客を待つ。
突然なくなってしまいあとから参加していた私は
死に顔さえ見れずにすでに白い箱に収まった母の前で
父と妹と慌ただしく支度をしていた
まずは親族が訪れ葬式が始まる。
母の思い出がナレーションのように流れ
懐かしい写真のスライドが流れる
そこで初めて母が亡くなってしまったことを
じわじわと痛いほど実感させられる
母の兄が
母がどんなに優しい人間で
どんなに惜しいかを
言葉をつまらせながら隣の人に言い聞かせている
私は泣きじゃくりそうになる気持ちを抑えるため
喉奥でそれを押し殺す
目の前の白い箱に
どうしていままで
優しく接してあげられなかったのかと
喧嘩をしたままに逝ってしまったのかと
いつでも仲良くするきっかけを
母はくれていたのにと
悔しい涙があとからあとから溢れてくる
もう思い出せるのは
明るく笑う母の顔だけだ
どんな顔で死んでいたのかを
最後はどような思いだったのかを
私は知ることができない
もう母と話すことはない
見ることもできない
母の手の感触は
髪の質感は
まとう空気はどんなだっただろうか
私はしばらく母と会っていなかった。
母の最後を見届けたであろう
うなだれる父が羨ましかった
…というところでパッと目が冷めた。
昨日電話頂戴とメッセージを残してくれたのに
母からの3回のコールを無視したままだった。
今日は必ず母へ電話をしよう。