私が思っていたより反応があった、拙著『骸』ですが、読んだ後に色んな考え方ができるようにしたいと思って書いたものです。
とはいえ、私が意図した内容もあるわけです。
ここで少し紹介したいと思います。
①骸の意味
そもそも、骸ってなんでしょう?
そのまま考えれば死体ですが、そこにあるのは主人公である『僕と同じ姿』をしています。
私は、この骸に『自覚した自分の欠点』という意味を持たせました。
自分の欠点って、思いの外気付けないものだと考えていて、それに気付き克服したいと願った瞬間が作中で骸を生み出す瞬間にあたります。
ただ、自分の欠点を葬ったところで、それは骸として残ります。
自己否定をしたところで、自分は変わりませんから自分否定の先にある自己受任しない限り、欠点は骸として残るのだと思ってます。
②うわがきの意味
サブタイトルの『うわがき』ですが、①の内容を読んでもらえればわかるとおり、骸を生み出す行為は自分をアップデートすることと同じ意味です。
自己否定をして新たな自分へと上書きする、そんな感じです。
ただし、既に言及したとおり、上書きしただけでは骸は残る。人はそんなに都合良くないんですよね。
そんな未熟な虚しさを表現したくて、平仮名にしています。
③最後の言葉の意味
骸はそれぞれ『見捨てないで』と『死にたくない』と口だけ動かします。
ただの現世への未練に読めますし、事実、そのとおりの意味があります。
この場合の未練とは、その欠点の中に潜む長所を忘れないでとの願いを込めています。
最初の骸は、弱々しく自分の意見を言えずに周囲に流されてしまうだけの存在ですが、その奥底には相手を思いやる気持ちがあります。
2体目の骸は、自立しようと意固地になり他者を見下し受け入れない存在ですが、その奥底にも相手を思いやる気持ちが隠されてます。
主人公の『僕』は自己否定を繰り返しますが、根底は変わらないんです。
④精液の意味
皆様、精液の描写をどう考えたでしょうか?
ただの死を目前にした最後の生理的反応と感じたでしょうか?
それとも作品の奇妙な雰囲気を引き立てる道具だと思ったでしょうか?
私としては、人の死の描写に向き合いたい気持ちと、次の自分への希望、そして最後の無駄な抵抗、そんなことを考えました。
以上、つらつらと述べましたが、これが正解ではないです。
皆様が感じてもらった感想全てが、作品の持つ意味なのかなと思います。
この作品を読んでくださった方々に感謝を捧げます。