はじめまして。東雲 諒杏と申します。
このたび、歴史転生小説
『カエサルの左腕
~外傷外科医だった俺は、古代ローマで軍医参謀になった~』
の連載を始めます。
舞台は紀元前五十八年。
現代日本で外科医として働いていた高瀬真一は、突然の死を迎えた後、ローマ共和政末期を生きる二十四歳の青年、ルキウス・アエリウスとして目を覚まします。
時代は、ガイウス・ユリウス・カエサルがガリア戦争へ踏み出そうとしていた頃です。
本作の主人公は、剣の達人でも、無双の将軍でもありません。
槍を振るうより傷を縫い、敵兵を倒すより感染症を防ぎ、勇敢さを語るより、食料、水、患者数、死亡率を数える人物です。
手洗い、煮沸、創傷処置、野戦病院、トリアージ、衛生兵教育。
さらに、兵站管理、統計分析、組織改革、退役兵の仕事、占領地の復興。
一人の患者を救うための医学知識が、やがて軍団全体を動かす制度へ変わっていきます。
ただし、未来の知識があれば、すべてがうまくいくわけではありません。
正しい医療を広めれば、ローマ軍は強くなる。
兵站を改善すれば、軍団はさらに遠くまで侵攻できる。
人を救う制度が、同時に征服を支える制度にもなってしまう。
主人公は、医師として人を救おうとしながら、自分の改革が戦争を強くしているという矛盾に向き合います。
本作では、カエサルやラビエヌス、クラッスス、アリオウィストゥス、ベルガエ諸族など、実在の人物や『ガリア戦記』の出来事を土台にしています。
その一方で、主人公や医療制度、人物同士の会話、細かな戦場描写には創作を含みます。
医学、公衆衛生、統計、経営、組織論については実際の知識を参考にしていますが、物語として読みやすくするため、簡略化や再構成を行っています。
古代ローマ史に詳しい方にも、これまで歴史小説をあまり読んでこなかった方にも楽しんでいただける作品を目指します。
この物語の中心にあるのは、次の問いです。
英雄一人が世界を変えることはできる。
では、その英雄が死んだ後、世界はどうなるのか。
英雄は歴史を作る。
制度は歴史を残す。
主人公ルキウスが、カエサルの「右腕」ではなく「左腕」と呼ばれるようになるまでの物語を、見届けていただけましたら幸いです。
今後、順次エピソードを公開していきます。
作品を読んで面白いと感じていただけましたら、作品フォローや★評価、コメントをいただけると、今後の執筆の大きな励みになります。
どうぞよろしくお願いいたします。
東雲 諒杏