こんばんは、御影 譲です。
先ほどの記事で、少し真面目なお話をさせていただきました。
重いテーマを受け止めてくださり、ありがとうございました。
さて!
しんみりして終わるのも彼ららしくありません。
ここからは完全に「蛇足」にして「ご褒美」。
平和になった世界で、彼らがどんな休日を過ごしているか、少しだけ覗いてみましょう。
完結後の世界で、もし彼らが休日を過ごしたら?
そんな「平和な蛇足」を、少しだけお届けします。
──
【番外編】論理的すぎるダブルデート、または義兄の受難
【Extra:休日、遊園地、計算外のエラー】
日曜日のテーマパークは、極彩色の混沌(カオス)だった。
極限まで圧縮された人口密度。断続的に響く悲鳴(ジェットコースター)と電子音。そして、大気中に充満するポップコーンの甘ったるい香り。
その只中で、桐島蓮は眉間に深い皺を刻み、腕組みをして仁王立ちしていた。
彼が睨みつけているのは、アトラクションではない。
『待ち時間:120分』と表示された電光掲示板だ。
「……理解不能だ」
蓮が低く呻く。その声には、世界の理(ことわり)に対する純粋な憤りが滲んでいた。
「この行列の処理速度(スループット)は明らかに破綻している。係員の誘導アルゴリズムを最適化し、搭乗プロセスを並列化すれば、待ち時間は40%短縮できるはずだ。なぜ運営は動かない? なぜ民衆はこの非効率を甘受している?」
「蓮。あのさ、これ『デート』だから」
隣でチュロスを齧っていた柏木湊が、呆れたようにツッコミを入れた。
今日の湊は、いつものシャツではなくラフなパーカー姿だ。右手に手袋はない。素手で持ったチュロスの砂糖が指についても、彼はもう「何かが壊れる」ことを恐れなくていい。
「並んでる時間も楽しむもんだろ、こういう場所は」
「楽しむ? 無為に流れる時間をか? 君の脳は砂糖で融解したのか?」
「はいはい。……ほら、雫も紗羅ちゃんも戻ってきたぞ」
人波をかき分けて、二人の少女が戻ってきた。
雨宮雫と、桐島紗羅。
二人はお揃いのカチューシャ(耳付き)を手に、花が咲くような笑顔を浮かべている。
「お待たせしました! 見て見て湊くん、限定のポップコーンバケツ!」
「蓮さん、飲み物買ってきましたよ。……もう、また難しい顔して」
紗羅が、冷たいアイスティーを蓮の頬にピタリと当てた。
冷たさに蓮がビクリと肩を震わせる。
「……紗羅。私は今、このパークの動線設計について考察を……」
「ダメです。今日は『論理(ロジック)』禁止です」
「なっ」
「『可愛い』と『楽しい』と『美味しい』。この三つの単語だけで会話してください」
紗羅はニッコリと微笑んだ。
その笑顔は、かつて「お人形」と呼ばれていた頃の弱々しいものではない。覚醒した聖女の、絶対的な慈愛と支配力がそこにあった。
世界最強のハッカーである蓮が、たった一人の少女の前で言葉を詰まらせる。
「……善処する」
「ふふ、よろしい」
その様子を見て、湊と雫が顔を見合わせてクスクスと笑った。
かつて命を削り合って戦った敵同士が、今はこうしてダブルデートをしている。
平和すぎて、涙が出そうなくらいだ。
「あ、そうだ湊くん」
雫が、自分の頭を指差して悪戯っぽく笑った。
「私と紗羅ちゃんだけズルいよね。はい、これ」
渡されたのは、彼女たちがつけているのと同じシリーズのカチューシャだった。
ただし、男性用。
もっと言えば、犬の耳だ。
「……これをつけるのか?」
「うん。……ダメ?」
雫が上目遣いで見つめてくる。108回の死を乗り越えたその瞳で、「お願い」と訴えかけられると、湊には拒否権など存在しない。
「……分かったよ」
湊が観念してカチューシャをつけると、雫は「可愛い!」と歓声を上げ、スマホの連写モードを起動した。
「さあ、次は蓮さんの番ですよ」
紗羅が、もう一つのカチューシャ(こちらは猫耳)を蓮に差し出した。
蓮の表情が凍りついた。
「断る」
即答だった。
「私の社会的地位と、美的感覚がそれを許さない。第一、空気抵抗が増大し、歩行時のバランスに支障をきたす」
「蓮さん」
「……なんだ」
「つけてくれないと、私、観覧車で隣に座ってあげません」
沈黙。
蓮の脳内で、瞬時に高度な演算が行われた。
『猫耳の着用による精神的ダメージ』 vs 『紗羅との観覧車密室イベントの喪失』。
解は、0.0001秒で導き出された。
「……貸せ」
蓮は屈辱に震える手でカチューシャを受け取り、乱暴に頭に装着した。
黒髪に生えた、不機嫌そうな猫耳。
そのシュールかつレアな光景に、湊は腹を抱えて爆笑し、雫は動画撮影を開始した。
「……笑うな、柏木」
「いや、似合ってるぞ、お義兄さん」
「誰が義兄だ。……紗羅、これで満足か?」
蓮が不貞腐れてそっぽを向くと、紗羅は愛おしそうに背伸びをし、その猫耳を優しく撫でた。
「はい。……世界一かっこいいですよ、私の蓮さん」
その一言で、論理の怪物は撃沈した。
耳まで真っ赤にして、「……フン」と口元を緩める姿は、ただの初恋を拗らせた青年でしかなかった。
青空の下。
硝子の箱庭はもうない。
あるのは、非効率で、騒がしくて、どうしようもなく愛おしい、彼らの「日常」だけだった。
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はい、完全に蓮さんがオチ担当でした(笑)。
本編では見られなかった彼らの笑顔、楽しんでいただけましたでしょうか。
【おまけ】チビキャラになった雫たち(グッズ化とか興味あります?)
完結の余韻に浸っているところ、失礼します。
寂しくなってAIをいじっていたら、雫たちが可愛いSDキャラ(2等身)になってまたまた出てきました。
本編はあんなにシリアスだったのに、この緩さ……(笑)。
こういう「癒やし」全振りのイラストも、たまにはいいですね。
ちなみに……もし、こういう絵柄でLINEスタンプとかがあったら、欲しいと思ってくださる方っていらっしゃいますか?
* 蓮さんの「論理的だ」スタンプ(ドヤ顔)
* 雫の「バグです」スタンプ(ジト目)
* 湊の「胃が痛い」スタンプ
* 紗羅の「ダメです♡」スタンプ
個人的に、蓮さんのスタンプで会話を論破したいなと思いまして……。
もし「欲しい!」「もっと見てみたい!」という声が多ければ、調子に乗って作ってしまうかもしれません。
コメントや♡で反応いただけると嬉しいです!
それでは、また!
御影 譲
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【掲載画像について】
※本画像は作品の世界観やキャラクターを表現したイメージビジュアルのパロディです。本編中に全く同じシーンが登場するわけではありません。
※画像作成には画像生成AIを使用しています。
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