ヒャッカベネロ / 第16回講談社BOX-AiR新人賞を受賞してデビュー / 著作「轟運探偵の超然たる事件簿 探偵全滅館殺人事件」(星海社) / 「ごあけん」(講談社BOX) / 「母の嘘」(竹書房「悪意怪談」所収) /
講談社BOX新人賞佳作。第4回クリエイティブメディア出版コンテスト児童書部門準大賞。第22回パピプペポ川柳コンテスト。第1回百壁ネロ賞。上梓作/『ゆびさき怪談』他/https://bit.ly/3hrZj1A/http://bit.ly/2wwbEtU/岩城裕明主宰・薄禍企画同人誌へ多数。
コチラは、テキスト作品を展示しているギャラリーです。 以下、取り扱い作家。 ●岩城裕明(TwitterID:@hiroaki_iwaki) 「三丁目の地獄工場」(角川ホラー文庫)が発売中。他に「煉獄ふたり 優しい幽霊はコンビニにいる」(講談社BOX)「牛家」(角川ホラー文庫)などがある。 ●円山まどか(TwitterID:@maruyamadoka) 「八月の底」(ディスカヴァー 21)が発売中。他に「自殺者の森」(講談社BOX)がある。
YouTubeの概要欄で小説を発表しています。オリジナルの純文学、恋愛小説、ボーイズラブを書いています。 タイトルは『百年経っても読まれる小説の書き方』 https://www.youtube.com/channel/UCRPUTEZPFUEvKSI2IAaHBjw トップ5ビデオが全部が観られるプレイリスト https://www.youtube.com/watch?v=7hkgxafSOAk&list=PL4gh5DQAT3fJscrYjXZ12zSAi85GcoJ7M 私の掌編を御紹介。 『そんなことしたら寂しくて死んでしまう』 女って馬鹿ね。まだ諦めない。祈ってる。神様なんて信じてないのに。和光の前で心臓がガクって跳ねて、うずくまりたくなって、でもそれはできなくて、レオナには行く所がある。死ぬ前に。 レオナが崇拝するデザイナー。最期に覗きたかった。銀座の本店。閉店してるのは知ってて、でも閉店してなくても、レオナは中に入らなかった。シャネルスーツの金色のボタン。そこにスポットライト。 発光する金色。その上をなにかが回っている。そんなわけないのに、そんなことがレオナには時々ある。死んだデザイナーに死んだら会えるのかな? 自殺だと違うとこに連れていかれるのかな? 時雄(ときお)に宣告した。もう一度したら終わりだって。 レオナの父と母は、私をプリンセスみたいに育てて、欲しくても自分のものにならなかったのは、時雄が初めてだった。 時雄がその人といるのを見た。私には見せたことない笑顔。終わりだって言ったでしょ? 胸の骨が痛むほど泣いた。なんで泣いてたの? 私、なんで泣いてたの? 欲しいものはなんでも手に入るはずだった。 どうやって死ぬ? 飛び降りるのは怖いし、鉄道も怖いし、薬をウォッカと一緒に飲む? そうだ! 川に飛び込む。東京の川は汚そう。太宰の頃はきっと綺麗だった。 地方に行く? まだ楽勝に電車はある。相当遠くに行けそう。なんでわざわざ地方に行くの? ビルだったら東京の方がいっぱいある。 そうだ、樹海! あそこに行こう! 馬鹿ね。そんなことしたら寂しくて死んでしまう。って、死にたいんじゃないの? 無理よね。銀座にいたってこんなに寂しい。 警備員を見たら、あっちもこっちを見ていた。若造だし、頭が悪そうだったから無視する。人生の最期に見たいものを見る権利がレオナにはある。まだ金色のボタンになにかが回っている。なんだろう? 顔がウィンドーに触れるくらいで、実際、額がガラスにぶつかって、冷たさにさっきみたいに心臓がガクって跳ねた。 小さな夜汽車が回っている。その窓は眩しくて、人が乗ってて、薄っすらと煙を吐いて。それは五個ついてるどのボタンにもいる。『銀河鉄道の夜』を思い出す。宮沢賢治好きじゃないのに。ごめんね、宮沢賢治。 ゆっくり回ってる汽車にはたくさん人が乗っている。煙ももっと吐いている。そうじゃないのは、乗客が一人か二人。凄い速さで回っている。これで採算が合うのかな? 変な心配をする。学校の遠足みたいな人達がいて、膝に風呂敷で包んだお弁当を抱えて、嬉しそうで。 「Nice legs!(いい足してんじゃん!)」 金色のオープンカー。どっかの白人が私に叫んで口笛を吹く。うるさい。死ぬ時くらい静かにして。 でもレオナは人のこと怒れない。死ぬ時くらいはお洒落にしようと思って、一番短いワンピースを着た。 もうたっぷり見たかな? 死んでも後悔しないかな? 信号は丁度青だ。レオナは道を渡る。ステップは意外と軽い。 百貨店のウィンドー。そこに短いワンピースの女が映る。いい感じ。髪も完璧。「Nice legs!」。銀座らしい美人。振り返っても誰もいない……。なんだ! ハイヒールでジャンプして、ウィンドーの自分を見る。笑う、笑う。誰か私の笑いを止めて!人々は憐れんで私を避けて通る。 レオナは生きてる。人生は始まったばかり。なんだ! なんだ! 馬鹿な時雄のことなんて捨てる。笑うと胸が痛い。あんなに泣くんじゃなかった。 もう一度信号を渡って和光の前に戻る。五人くらい待ち合わせしてる人達がいる。私もその人達の仲間に入る。誰かを待っている魅力的な私。誰を待ってるの? 私、誰を待ってるの? 金曜日で夜は始まったばかり。男が立ち止る。トレンチコートの男。 「今、何時ですか?」 レオナは和光ビルを見上げる。男も一緒になって見上げる。和光の前で時間を聞くってどういう馬鹿? って思ってその人の顔を見る。クラーク・ゲーブル級の頬笑み。 「そうじゃなくって、君、誰のこと待ってるの?」 なんて言っていいのか。とりあえず黙る。よくハーフか? って聞かれるから、日本語が分からない振りをする作戦。 そしたらまずいことに、あっちは英語で応戦してくる。 「Excuse me. Who are you waiting for?(誰のこと待ってるの?)」 「……ここにいると、いいことがありそうだな、って」 ほんとのこと言っちゃって、恥ずかしくて、男はレオナに腕を差し出して、私はそれにつかまって、腕を組んで少し歩いて、知らない人なのに変で、あのブティックに戻って、夜汽車はまだボタンの上にいて、くるくるして、窓がさっきよりもっと金色で、元気な汽笛がいっぱい鳴って、みんなが歓声をあげてレオナ達に手を振ってくれる。 (了)
ルト。 漢字は別名。賞投稿に使う予定のやつ。 バトルとファンタジーが主食ですが、シリアスからロボットまで書き散らしてます。量産兵器で戦う話は最高に燃える。 ラブコメは不得手ですが慣れていきたいところ。 カクヨムでは主にコンテストとかに投げていくことになると思います。
加速する猫背。 はてブ【http://kagamimono-nishiki.hatenablog.com/】 なろう【http://mypage.syosetu.com/148936/】