おとうさん、おかあさんがいないせかい
じゆうで、ひろびろとして、あたまのうえに真っ青な空がある
おとうさん、おかあさんのいないせかいを、わたしはずっとねがっていた
ねがいながら、そんな日がくることを
ほんきで信じてはいませんでした
おとうさん、おかあさんのいないせかい
好きなところへ、いつでもいける
かえってこなくてもいい
死んでしまってもいい
もうだれも、ほんきでわたしを待っていない
幼いころにおとうさん、おかあさんをうしなったこどもは
どんなにじゆうでさびしかったか
それがいま
ようやく わかる
おわってしまったものの圧倒的な力が
帯のように波打ちながらわたしに及び
わたしをこのよのふちから突きおとす
だれのこどもでもない、
もう、わたしは。
小池昌代『くたかけ』