• 現代ファンタジー

【殴り魔SS】世界のはじまりと愚神の子 2022/04/26 サポ限解除

この世界は、数多の神によって創造された。
太陽、月、星、大地、生命、理。
世界を象るありとあらゆるものを、神々は創り出した。

こうして世界の原型ができあがると、最後に運命を司る神がその車輪に息を吹きかけて、世界は動き出した。

廻り始めた世界。
神々は、その終焉まで見届けることにした。


神々は、なるべく世界に干渉しないようにした。
本来、世界とは自らの力で廻り続ける存在でなければならないためだ。過度に干渉しようものなら、その概念はたちまち崩壊してしまう。故に、神々は世界の干渉に関して制限を定めた。

しかし、全く干渉しないというわけにもいかなかった。
皮肉な事に世界とは自ら廻るべき存在でありながらも、神の力なくしては酷く脆い存在でもあったのだ。

そこで神々は己が司る性質と共鳴するものを〝神の子〟と定め、その性質の一部を分け与えた。
そうすることで世界が廻り続ける為の手助けをしたのだ。

神々が齎した恩恵は、世界にあらゆる変化を生み出した。

或いは、発展の礎に。
或いは、争いの矛に。

悠久にも近い刻の中、世界は絶え間なく変化していった。


その変化が緩やかになった頃。
世界では、人族と魔族が争いを始めた。
この出来事に神々は期待した。
争いは大きな変化を生むからだ。
たが双方の力は均衡しており、その争いによって世界が大きく変わることはなかった。

とある神が、一人の魔族を己の子と定めた。
世界を掌握しかねないほどの権能。
それを、その魔族へ惜しみなく与えたのだ。

──全ては世界に変化を齎すために。

緩やかに廻る世界。
それが神の権能により次第に傾いてゆき、激化する争いは那由多の死を齎した。
しかしながら、そんな事は神に関係がなかった。
神にとって重要なのは、世界に変化をもたらす事なのだ。
それこそが、世界が世界のままで在り続ける為に必要な要素なのだから。
それを満たしさえすれば、その箱庭の中でどんな種族が繁栄し、どんな種族が滅びようとも構わなかった。


〝完全〟なる権能を得たその魔族は、やがて魔王を名乗り、己が望む理想郷を築かんと蠢き出す。
それは人族にとって悪夢の始まりでもあった。

その魔族に恩恵を与えた神は、神々の中でも最高位の力を持っていた。
故に、その権能は強大で果てしなく。
他の神々の恩恵を受けた人族が束になっても、魔王には敵わなかった。
やがて人族は衰退し、そのまま滅びの一途を辿るかと思われた。

そして世界が大きく変貌を遂げようとした時。
とある女神が気まぐれを起こした。

神でありながら、神の席を蹴り捨てた愚神。
もはや、その名すら世界に忘れられた存在。

それまで世界に無関心だった彼女は、一人の人族の青年を自らの子と定めた。

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