【第1話:絶縁不良】現場用語TIPS
・腰道具(こしどうぐ)
電工職人が腰ベルトに装着している工具一式のこと。ペンチ、ドライバー、電工ナイフなどが並ぶ。トミーが合コンに持ち込んだ「勝負服」ならぬ「勝負装備」。
・インシュロック(結束バンド)
本来は電線や配管を束ねて固定するためのプラスチック製バンド。一度締めると逆戻りしない構造で、作中では「拘束具」として流用された。
・接触不良(せっしょくふりょう)
電線同士のつなぎ目が不完全で、電気がうまく流れない状態。マサは直也がパニックで思考停止している様をこれに例えた。
・支持(しじ)
配線や配管が動かないように、金具やバンドで構造物に固定すること。ミキたちを椅子に括り付ける行為を、マサは「仕事」として処理している。
・ビニテ(ビニールテープ)
絶縁や保護のために使う粘着テープ。作中ではリカの口を封じる「猿ぐつわ」の代わりに、へたくそに巻き付けられた。
・VVFケーブル
一般住宅などで最も使われる灰色の平たい電線。強度がそれなりにあり、作中では女たちを柱に縛り付ける「縄」として代用された。
【第2話:仮設から常設へ】現場用語TIPS
・仮設(かせつ)
工事期間中だけ一時的に設置する設備のこと。マサは、ケーブルで縛っただけの状態を「一時しのぎ」と判断し、より強固な「常設」への切り替えを命じた。
・インパクト(インパクトドライバー)
回転に打撃(インパクト)を加えて強力にネジを締め込む電動工具。職人の必須アイテム。
・ドリルビス
刃先がドリルのようになっており、下穴なしで鉄板や木材に直接食い込んでいくネジ。これを使って、女たちを椅子ごと床に「揉み込む(固定する)」。
・アンカー(完全固定アンカー)
構造物に部材をしっかり固定するための処置や部品のこと。引き抜こうとしてもびくともしない「絶対的な固定」を意味する。
・支持金具(しじかなぐ)
配管などを壁や天井に固定するための金属製パーツ。作中ではマサが自分の怪我を補修し、女たちの関節を物理的に動かなくするために使用される。
・系統(けいとう)
電力の供給ルートのこと。街全体の電気がショートしている様子を、マサたちは「系統がイカれてる」と表現した。
・剥離(はくり)
電線の被覆を剥くこと。ゾンビが人の肉を食らう様子を、直也は職業病的にこう表現してしまった。
【第3話:工程検討会議】現場用語TIPS
・コーススレッド
木材専用のネジのこと。目が粗く、木材同士を強力に引き寄せて固定する力が強い。直也が扉を「揉み殺す(開かないように固定する)」ために使用した。
・揉み殺す(もみころす)
ネジ(ビス)を力任せに打ち込み、二度と動かないように、あるいは部材が壊れるほど強固に固定してしまう現場の俗語。
・物理的な絶縁(ぶつりてきなぜつえん)
本来は電気を通さない状態にすることだが、ここでは「怪物たちとの物理的な接触を完全に遮断すること」を指している。
・全遮断(ぜんしゃだん)
ブレーカーが落ちるなどして、全ての電源が断たれること。統制された消灯を見て、直也は意図的な「回路の遮断」を感じ取った。
・現場を納める(げんばをおさめる)
工事を完了させ、不備のない状態で引き渡すこと。マサはこの地獄のような状況を「未完了の仕事」として捉え、どう完結させるべきかを問うている。
【第4話:系統外走行】現場用語TIPS
・短絡(ショート)
電気が本来の道を通らず、近道をして流れてしまう異常事態。直也はトミーの安易な立てこもり案を、その場しのぎの危険な応急処置だと一蹴した。
・絶縁距離(ぜんぜんきょり)
感電や放電を防ぐために必要な、電気を通すもの同士の「離さなければならない距離」。ここでは、怪物(不良在庫)に襲われないための安全な距離を指している。
・活線(かっせん)
電気が流れている状態の電線のこと。病院の非常用発電機が生み出している「生きている電源」を、直也は希望として表現した。
・重大な不適合(じゅうだいなふてきごう)
現場のルールや仕様書から著しく逸脱した、致命的なミスのこと。マサは飲酒運転を「職長として絶対にあってはならない不適合」として拒絶しようとした。
・公道のルール・私有地内の重機搬送
工事現場の中(私有地)では、道路交通法ではなく現場独自のルールが適用される。直也は「信号が死んだ街はもはや公道ではなく、巨大な更地の現場だ」という屁理屈でマサのブレーキを外した。
・アイソレーション(区画閉鎖)
本来は点検などのために、特定の回路を他の系統から切り離して独立させること。自衛隊が街を封鎖していく様子を、直也は専門用語で「アイソレーションが始まっている」と分析した。
・シュリンク(収縮)
範囲が縮まること。封鎖範囲が狭まり、逃げ場がなくなるタイムリミットを直也は危惧した。
【第5話:系統外の機動(アウト・オブ・フェーズ)】現場用語TIPS
・アウト・オブ・フェーズ(系統外)
本来の電気系統から外れていること。ここでは、交通ルール(系統)を無視して走るハイエースの暴走状態を指している。
・積載確認(ロードチェック)
荷崩れがないか、過積載ではないかを確認する安全点検。地獄への移動前でも、マサは職長としてのルーチンを欠かさない。
・通線ワイヤー(つうせんわいやー)
配管の中に電線を通すための、細くしなやかで弾力のある道具。暗闇を四肢で這い寄る不気味な怪物の動きを、直也はこれに例えた。
・工程短縮(こうていたんしゅく)
工期を早めるために作業スピードを上げること。マサにとっての加速は、単なる逃走ではなく「仕事の効率化」に他ならない。
・敷設(ふせつ)
電線や線路を設置すること。道なき道を進むことを、マサは「車線を敷く」と表現した。
【第6話:絶縁破壊(ブレイクダウン)】現場用語TIPS
・絶縁破壊(ブレイクダウン)
絶縁体に加わる電圧が限界を超え、電気が流れてしまう(=絶縁が壊れる)現象。物語的には、社会のルール(検問)を暴力的に突破した状態を指している。
・漏電(ろうでん)
電気が本来の通り道以外に漏れ出してしまうこと。自衛隊の防衛線が突破され、怪物が漏れ出し始めている予兆をマサは見抜いた。
・先行配線(せんこうはいせん)
建物の骨組みができた段階で、後からでは通しにくい場所に先に電線を通しておくこと。マサは封鎖が完了する前に、無理やり「ルートを確保する」行為をこう呼んだ。
・不良在庫(ふりょうざいこ)
売れる見込みがなくなり、倉庫に眠っているだけの資材。ここで止まって怪物に食われ、死体として放置されることをマサは「一括処理される不良在庫」に例えた。
・完全絶縁(かんぜんぜつえん)
外部との電気的・物理的な繋がりが完全に断たれること。福岡の街から切り離され、助けが来ない絶望的な状況のメタファー。
【第7話:絶縁区間(アイソレーション)】現場用語TIPS
・アイソレーション(絶縁区間)
本来は回路の一部を物理的に切り離し、電気が流れないように孤立させること。自衛隊は路地の入り口を塞ぐことで、マサたちを「袋のネズミ」として社会から孤立(アイソレーション)させた。
・バイパス(短絡路)
故障箇所や混雑を避けるための、本来のルートとは別の「寄り道」や「近道」。マサは、封鎖された地上を避けて地下鉄の線路を移動ルートとして利用することを「バイパスを通る」と表現した。
・暫定支持工事(ざんていしじこうじ)
本工事までの間、一時的に設備が倒れたり動いたりしないように固定する応急処置。パンクした右後輪に対し、移動を継続するための「職人ならではの荒業」を施すことを指す。
・軌道走行用への改修(きどうそうこうようへのかいしゅう)
通常の道路ではなく、鉄道のレール(軌道)の上を走れるように車両を改造すること。ハイエースという「重機」を、地下鉄の線路という新しい現場に適応させる工程。
・仕様書(しようしょ)
工事のルールや手順が細かく記された書類。マサは、自衛隊が想定している「封鎖のルール(仕様書)」を、現場のノリで破壊してやると宣言した。
【第8話:不純物の検収】現場用語TIPS
・芯が振れる(しんがふれる)
回転体の中心軸がズレて、ガタついている状態。ここでは、撃ち抜かれたホイールが歪み、まともに回転しなくなったハイエースの惨状を指している。
・検収(けんしゅう)
納品された資材が、発注通りで不備がないか確認すること。マサは直也たちが持ち帰った「生存者」をも、現場に混じり込んだチェック対象(不純物)として冷徹に扱った。
・養生(ようじょう)
作業中に周囲を傷つけないようカバーすること、またはコンクリートなどが固まるまで保護すること。マサはテーブルの脚を、レールの継ぎ目を越える際の「緩衝材」として使うよう指示した。
・パージ(絶縁パージ)
不要なものを切り離し、除去すること。トミーは動けない生存者に対し、「走れなければ見捨てる(切り離す)」という厳しい警告としてこの言葉を使った。
・ノイズ(不純物)
本来の信号を邪魔する不要な電気信号のこと。マサは、自分たちの目的(病院突入)に直接関係のない生存者を、計画を乱す「ノイズ」と称した。
【第9話:機材放棄(アバンドン)】現場用語TIPS
・アシスタント(手元)
熟練工の横で資材を渡したり補助をしたりする補助作業員のこと。マサは生存者の黒服を、恐怖を忘れさせるほどの勢いで「手元」として使い倒した。
・寸法ミス(すんぽうみす)
図面と実物のサイズが合わず、機材が入らなかったり設置できなかったりする致命的なミス。マサたちのハイエースは、エレベーターの有効幅という「物理的な数字」に敗北した。
・自己融着テープ(じここっちゃくてーぷ)
接着剤がなく、テープ同士が重なることで一体化して固まる特殊なテープ。直也はこれを使ってエレベーターのセンサーを物理的に塞ぎ、安全装置を「無効化」した。
・光電センサー(こうでんせんさー)
光を放出し、遮られることで物体を検知する装置。エレベーターの扉に指や物が挟まらないように監視しているが、直也はこれを「盲目」にすることで、強引に扉を閉めさせた。
・リミットスイッチ
物体の位置や動きを検知して、電気回路を切り替えるスイッチ。エレベーターの扉が「完全に閉まった」ことを検知する最後のトリガーであり、これが落ちたことでカゴは動き出した。
【第10話:導通試験(ポイント・チェック)】現場用語TIPS
・導通試験(ポイント・チェック)
回路がつながっているか(電気が流れる通り道があるか)を確認する検査。ここでは、地下鉄の通路が目的地まで物理的につながっているか、安全に通れるかを確認する行程を指している。
・露出配管(ろしゅつはいかん)
壁の中に隠さず、あえて外に見えるように設置された配管のこと。地下施設では一般的で、直也はこれを見て電気室(電源)の方向を特定した。
・共振(きょうしん)
物体が外部からの振動に反応して、さらに大きく揺れること。マサは、地下に潜む大量の怪物が発する微かな振動が重なり合い、空気を震わせている不気味な様子をこう表現した。
・ビスをナメる
ネジの頭の溝が潰れてしまい、ドライバーが空回りして回せなくなること。暗闇での作業は手元が狂いやすく、職人が最も嫌う事態の一つ。
・活線作業(かっせんさぎょう)
電気が流れたまま(=生きたまま)の状態で作業を行うこと。転じて、敵(不具合品)がひしめく「生きている地獄」の中を、止まらずに突破する強行軍を意味している。
・歩留まり(ぶどまり)
投入した原料から、実際に得られた製品の割合。ここでは、目的地に到達するまでに削られていく「体力」や「精神力」、あるいは「生存者の数」を冷徹に比喩している。
【第11話:絶縁抵抗の限界(メガ・ダウン)】現場用語TIPS
・絶縁抵抗(メガ)
電気が漏れないように防ぐ能力のこと。これが「ダウン」するということは、漏電が発生し、触れれば感電する危険な状態になることを意味する。
・グレーチング
溝や床に使われる、格子状の金属製の蓋。ピンヒールでは足が挟まって動けなくなるため、マサは「仕様変更(ヒールを折る)」を命じた。
・止水壁(しすいへき)
水の浸入を防ぐための壁。これが壊れる(絶縁破壊)ことで、地下通路は巨大な「水没した回路」へと変貌してしまった。
・短絡(ショート)
電気が通るべきルートを外れ、近道をして流れてしまうこと。水没した通路では水が導体となり、いたるところで火花を散らす死のトラップとなる。
・ケーブルラック
天井付近に設置された、大量の電線を載せるための金属製の棚。本来は人の体重を支える設計(耐荷重)にはなっておらず、一行の「過積載」によって崩落の危機に瀕した。
・全ネジボルト
ラックを天井から吊り下げている、全体にネジ山が切られた棒。過度な重力がかかると、ネジ山が飛んだりボルト自体が破断したりする。
・抵抗器(ていこうき)
電気を流れにくくする部品。人体も電気を通すが、同時に大きな抵抗となるため、高電圧に触れると激しい熱を発し、文字通り「焼けて」しまう。
【第12話:絶縁不良の連帯(リーク・アライアンス)】現場用語TIPS
・絶縁不良(ぜつえんふりょう)
電気が漏れないように保護している被覆などが劣化し、電気が漏れ出してしまう状態。マサと直也たちの信頼関係が壊れ、感情が「漏れ出して」衝突している様子をなぞらえている。
・支持点(しじてん)
配管やラックを構造物に固定している箇所。一箇所が壊れると、隣の支持点にすべての荷重がかかるため、連鎖的な崩落の危険がある。
・オーバーフロー
許容量を超えて溢れ出すこと。直也の怒りが制御限界を超えた状態。
・損切り(そんぎり)
これ以上の損失を防ぐために、あえて現在の損失を確定させて撤退すること。マサは一人の犠牲を「全員が死ぬ」という最悪の結末を回避するための計算として処理した。
・設計ミス
計画段階での見積もりや計算の誤り。マサは自分を「完璧な人間」ではなく「計算を誤った技術者」として定義し、その責任を認めることで場を収めようとした。
・VVF(ぶいぶいえふ)
一般住宅やビルで最も多用される、平形の外装に絶縁電線が包まれたケーブル。黒服が担いでいる20kgの束は、物語における「重荷」と「希望」の両方を象徴している。