白く濃密な湯気が、浴室の狭い空間を優しく満たしていた。
お揃いの食器を買い、完全同棲を始めてから数日。
「……ママ、ちゃんと陽菜のこと、見ててくださいね?」
すぐ目の前、お湯を湛えた浴槽の中で、陽菜ちゃんがほんのりと上気した顔で私を見上げていた。
お風呂上がりに髪を乾かし合うだけのつもりが、「今日はどうしてもママと一緒に、一番近くでお風呂に入りたいんですっ!」と涙目でパジャマの袖をぎゅーっと引っ張られて、私たちは今、一つの浴槽の中に並んで身体を沈めている。
湯気の向こうにある陽菜ちゃんの姿は、おそろしく無防備で、そして官能的だった。
お風呂の熱のせいで、白く透き通るような肌は耳の裏まで艶やかに桜色へと染まっている。
お湯に濡れて肩に張り付いた黒髪と、お湯の動きに合わせて不意に触れ合う、驚くほど柔らかくてちっちゃな身体の温もり。
高身長な私の腕がほんの少し動くだけで、お互いの素肌がダイレクトに滑り合うような至近距離に、私の理性が、じわりと熱い音を立てて焼き切れそうになる。
私はなんとかポーカーフェイスを維持し、湯気越しに彼女を見つめ返した。
「……見てるよ、陽菜ちゃん。そんなに真っ赤になって、のぼせちゃったのかな?……それとも、私にそんなに近くで見つめられるのが、恥ずかしい?」
「……っ!?!?!?」
不意打ちで浴びせられたママのガチの至近距離からの声に、陽菜ちゃんはさらに顔を真っ赤に染め上げた。
耳まで茹で上がりそうなほど照れ爆発しながらも、彼女はお湯の中からちっちゃな両腕を伸ばし、私のパジャマではなく、濡れた剥き出しの肩をぎゅっと掴んで身体をすり寄せてきた。
「……っ、ママの嘘つき。そうやっていつも大人の余裕ぶって、陽菜のこと子供扱いしてはぐらかしてばかりで……っ。でも、お風呂の中までそんな格好いい声で意地悪するなら……陽菜、ママをめちゃくちゃに甘やかしちゃいますからね……っ?」
白く濃密な湯気が立ち込める浴室の中。
お湯に濡れて桜色に火照った顔のまま、陽菜ちゃんは潤んだ瞳で私を真っ直ぐに見つめ、ちっちゃな手を私の剥き出しの濡れた肩へと滑らせてきた。
狭い浴槽の中、お互いに衣服を身に纏わない密室。
陽菜ちゃんは震える吐息を私の鎖骨のあたりに吹きかけながら、お湯の中で、その驚くほど柔らかくてちっちゃな身体の熱を、私の胸元へとノーガードで隙間なくぎゅうううっと押し付けてきた。
お湯の動きに合わせて擦れ合う、お互いの滑らかな素肌の感触。
お湯を吸って重くなった彼女の黒髪が私に冷たく絡みつく一方で、密着した彼女のちっちゃな胸の鼓動と、女の子特有の甘くて瑞々しい熱が、私の身体へと容赦なく伝わってくる。
(お、おいおいおい……っ! 陽菜ちゃん、いくら2人きりのお風呂だからって、そのちもちちとした柔らかい熱を全身で押し付けてくるのは、さすがに私の理性でも限界だって……っ!)
高身長な私の腕の中にすっぽりと収まった我が娘の、あまりにも大胆で無防備な肉体の熱量に、私の頭の奥がじわりと熱く焼き切れそうになる。
私は何かが決壊するのを必死に堪えながら、彼女の細い腰をお湯の中でそっと抱き寄せ、陽菜ちゃんの耳に顔を近づける。
「……へえ、私をめちゃくちゃに甘やかしてくれるんだ。……じゃあ、どうするの? 陽菜ちゃん。こんなに身体をぴったりくっつけて、心臓、すごく速くなってるよ?」
「……っ、……っ、あ、うぅ……っ!!」
はぐらかすのをやめて、お湯の中で腰をぐっと引き寄せながら真っ正面から見つめ返した瞬間、陽菜ちゃんは一瞬で顔を耳まで真っ赤に染め上げた。
あまりにもストレートな大人の色気の覇気に気圧され、彼女は茹で上がりそうなほど照れ爆発しながらも、濡れた両腕を私の首の後ろへとぎゅっと回し、さらに強くその柔らかい身体を擦り寄せてきた。
「ま、ママ、いま絶対わざと腰を引き寄せましたよね……っ……ずるいです、お風呂の中でそんな格好よく抱きしめられたら、陽菜……のぼせちゃいます……」
私の腕の中で、陽菜ちゃんは全身を限界まで真っ赤に染め上げながら、お湯をパシャパシャと跳ね上げて可愛らしくジタバタと暴れる。
私は腕の中のぬくもりを逃さないようにしっかりと抱きしめ、のぼせてしまう前に彼女のちっちゃな頭を「よしよし」と優しく撫でてあやしながら、お風呂を満喫するのだった。