オスカー・ヴェルナー、地域学院教員/エリアスの担任
エリアスの所属する地域学院の担任教師。四十代半ば。派手な教育論を語る人物ではなく、生徒の答案、授業中の質問、日頃の行動を長く見ながら適性を判断する実務的な教育者。エリアスについても、単なる「成績の良い生徒」とは早くから見ていない。正答へたどり着く能力以上に、問題文そのものの前提を疑い、複数の資料を比較し、教師が想定していなかったところへ疑問を持つ思考の癖に注目している。一方、それが集団の中では扱いにくさにもなることを理解しており、必要な時には遠慮なく注意する。地方の学院だけでエリアスの将来を決めるべきではないと考え、王立統学院という選択肢を本人と家族に示す。エリアスより先に、彼の能力が「考えることを仕事にする場所」で生きる可能性を見抜いた人物。
アルノルト・フェルマー、エリアスの父/商人
河港の商業町で商いを営むエリアスの父。四十代前半。商品の仕入れ、保管、輸送、販売から代金回収まで、自分で店の実務を見る堅実な商人である。息子にも幼い頃から店を手伝わせ、帳簿を見せ、荷を数えさせ、時には簡単な契約書にも触れさせてきた。本人に英才教育をしている意識はなく、「商家の子なら知っておくべきこと」を教えているだけだと思っている。その経験が、エリアスに数字を抽象的な記号ではなく、物、人、金の動きとして見る習慣を与えた。息子ほど理屈を突き詰める性格ではなく、商売では不完全な情報のまま決断しなければならないことも教える。できれば店を継いでほしい気持ちはあるが、息子が自分とは違う場所へ進む可能性も次第に認め始めている。
リディア・フェルマー、エリアスの母
フェルマー家の家計と生活を切り盛りしながら、夫の商売も必要に応じて手伝う母。三十代後半。エリアスが幼い頃から、一度疑問を持つと納得するまで考え続けること、何かに集中すると周囲が見えなくなること、そして悪意なく相手を困らせる質問をすることを誰よりよく知っている。息子の変わったところを面白がりはするが、特別な子として持ち上げることはない。考え込んで食事を忘れれば食卓へ呼び、理屈ばかり話して相手を困らせれば「正しいかどうかと、今それを言うべきかは別でしょう」と釘を刺す。父がエリアスに商売を通じて物と数字を見る目を与えたのに対し、母は人と暮らすための日常感覚を教える存在。エリアスが安心して帰ることのできる家庭そのものを支えている。