【タイトル】
清楚系配信者、今日もリスナーの脳を弄ぶ
【キャッチコピー】
本日の配信は──んぁっ、ちょ、こーら♡
【タグ】
配信 Vtuber NTR 社会人 情緒をメチャクチャにする 脳を弄ぶ イチャイチャ 純愛
【1話】
■ サブタイトル
清楚系?
■ 本編
『こんばんは地球の人々。今宵も蒼いわね』
彼女はバーチャル配信者。
名前はアイリス・クロウェールズ。
『それでは、本日もゲームを始めましょう』
白と黒が混ざった長髪、妖しく光る灰色の瞳。
立派な胸部装甲を持っているが、清楚な服装をしており下品な印象は無い。
彼女のキャラデザは全体的に色素が薄い。
それと透明感のある声が合わさり、視聴者に儚げな印象を与えている。
『地球の人々、今宵も声援を届けてね』
清楚という概念が息をしている存在。
それがアイリス・クロウェールズである。
通常、品性と人気は反比例する。
清楚で上品なキャラよりも、子供っぽいキャラの方がファンを集めやすい。
しかしアイリスの配信に集まる視聴者は、常に一万人を超える。
それは、とにかく癒されるからである。
汚い言葉を使わない。程々に悲鳴をあげる。それを恥ずかしそうに取り繕う。
画面の向こう側と侮ることなかれ。
清楚な美少女が、視聴者の目を真っ直ぐに見て、好意的な感情を見せるのだ。
彼女は配信する度にガチ恋勢を増やす。
だが、人気の理由は別のところにある。
それは──
『やっとクリアしたわね。ここから先はサクサクんぁっ、ちょっと、こーら♡』
──定期的に行われるこれである。
:マイクオフになった?
:なにごと?
:アイリス……嘘だよな?
:男だよ
:何これ事故?
:ペットだろ。ペットだと言ってくれ
彼女が戻るまでの間、主に初見組のコメントが飛び交う。
一分が経過した。
:流石に長くね?
:いやいや、まさか……
:何これマジで放送事故?
ブチっ、とノイズが走った。
『──にしてッ、配信中と言ったでしょう』
:おいマイク入ったぞ
:は?
:誰かと話してる?
『お願い。後で相手するから。そこは弱いの。本当に待って……んぁ、もうっ♡』
:これ完全に……
:ごめんもう無理
『待ってっ、マイク──』
再びノイズ。そして無音。
最初は多かったコメントも枯れ始めた。
それを見計らったかのように。
『戻りました』
:おかえり
:舞ってた
:今日もナイスでした
:脳が震えた
『ふむ』
アイリスは考え込むような声を出す。
『喘ぐ前の同接が一万四千ほど』
:喘ぐ前で草
:清楚どこいった?
『現在の同接が九千』
:一万割ったか
:てか元が多くね?
:直前にバズってたからな
『新記録かしら~!』
:出た
:高笑いをするお嬢様のポーズ
:スタッフが三徹したやつ
:このためだけに作らせたモーションすこ
:かしら~٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
『あらためて、自己紹介をするわね』
コホンと咳払いをして、彼女は言う。
『ごきげんよう。冥王星の第一王女、アイリス・クロウェールズよ』
最初の清楚な挨拶とは違う。
その声には、まるで他人を陥れた悪女のような響きがあった。
『アイリスの目的はただひとつ。復讐よ』
彼女は言う。
『我が冥王星を惑星から外した地球人どもに天誅を!』
彼女は強く言う。
『ご存知かしら!? 我々が海王星人から迫害されていることを!?』
彼女は喉の調子を整える。
『あっれぇ~? 仲間外れの方々じゃん。なんで惑星にいるんすか~?」
:これ何度聞いても草
:七色の声
:海王星人許せねぇな
『故にアイリスは誓ったのよ。配信活動をして、地球人どもの脳を弄ぶのだと』
:最高
:もっと弄んでくれ
:あぁ~^^
『今宵は五千個の脳を破壊してしまったかしら~!』
:かしら~٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
:かしら~٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
:かしら~٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
:何この一体感
:既に脳を破壊された者達だ。面構えが違う
『それでは下僕ども、次に向けて仕込みを始めるわよ』
:俺は下僕だった?
:イエス! アイリス!
:生きがい
:ところで喘ぎ声の下りは全部演技なの?
:おいバカ
『演技なのか、という質問があったわね』
:うわ
:見つかってしまった
『ひとつだけ教えてあげる。アイリスは処女よ』
:ユニコーン歓喜!
:マジかよ
:今日のコメ見てると新規多いな
『本番以外、すべて経験済かもしれないけどね』
:脳が破壊されました
:最近これ快感になってきた
:アイリスたんア〇ル処女〇ッチ説
:はかどるな
:コメント上級者ばっかで草
以上が人気の理由。
アイリスは普通の清楚系としても活躍できるスペックを持ちながら、あえて脳破壊配信というニッチな路線を突き進んでいる。それは、結果として多くの人々の性癖を狂わせることになった。
アイリスは小さな事務所に所属している。
しかし脳破壊配信は事務所の方針とは違う。
彼女──アイリスの魂には目的がある。
もちろん、それは不特定多数の脳を弄ぶことではない。
ターゲットは、ただ一人。
それは──
【あとがき】
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