東郷恭子(とうごう きょうこ)
年齢は二十八歳。
灰塚ダンジョン周辺で発生する犯罪、失踪、探索者間トラブル、ダンジョン内における暴力・違法行為の対応を担当する灰塚ダンジョン治安対策担当警部補。
灰塚ダンジョンの社会的影響拡大に伴い、警察側にも専属に近い形で常駐・継続対応を行う担当者が必要となり、その役目を任されている人物である。
探索者適性を持ち、自らダンジョン内に立ち入って現場確認や聞き取りを行うことも可能。単なる事務方ではなく、取り調べ、証言分析、現場判断に優れた実務型の警察官。
周囲からは、真面目で妥協を許さず、冗談が一切通じない女傑と思われている。
常に表情が険しく、声にも抑揚が少ないため威圧感があり、組合職員や探索者からも怖がられがち。融通の利かない堅物、近寄りがたい鉄面皮、美人だが色気より圧が勝つタイプ、といった評価を受けている。
一方で仕事ぶりそのものは非常に優秀で、感情論や場の空気に流されず、供述の矛盾や隠し事を冷静に拾うため、探索者たちからは苦手にされつつも実力は認められている。
しかし、その実態は周囲の認識とは大きく異なる。
生真面目で近寄りがたい雰囲気のせいで恋愛経験に乏しく、長年蓄積した欲求不満を内側に抱え込んでいる重度の変態。本人も表に出しているつもりはないが、内面ではかなり終わっている。
例の中堅探索者事件では、当初は支離滅裂に聞こえる「全裸仮面」の証言を誰も本気にしていなかった。
しかし東郷は、中堅探索者たちの供述の不自然さと、美奈や奈々子の反応の異様さから、逆にその存在が作り話ではないと判断する。
特に、美奈が全裸仮面についてぼかそうとしているにもかかわらず、嘘のつけなさから目が完全に泳ぎ切っており、もはや宇宙を見ているような反応になっていたことが決め手となる。
そこから東郷は、“灰塚ダンジョン内には未確認の強力な男性存在がいる”と確信する。
表向きには、
「ダンジョンは自己責任が強く求められる世界です。ですが、そうした場所だからこそ、犯罪行為や弱者への加害を見逃すわけにはいきません」
と正論を述べ、ダンジョン内犯罪の追及を理由に捜査へ乗り出す。
だが本音はまったく別である。
内面では全裸仮面の実在に脳を焼かれ、極めて不純な動機で灰塚ダンジョンへ足を踏み入れることになる。
ただし東郷は表情が固く、口調も普段通り厳格なため、周囲から見るとあくまで職務に忠実な有能警察官にしか見えない。
将来的にはトウヤを発見し、威厳も理性も外聞もかなぐり捨てて土下座に至る。
その後は何かを掴み取った女のように艶々した顔でダンジョンから帰還するようになるが、何があったのかは自分からは語らない。
地上においては警察官として灰塚ダンジョンと社会を繋ぐ公的窓口でありながら、個人的にはトウヤへの強烈な執着を抱く、危うくも使い勝手の良いパイプ役となる。
東郷恭子は、恋愛そのものに興味がないわけではない。
ただ、結婚や人生設計を前提にした関係を求めておらず、むしろそうしたものを煩わしいと感じている。
望んでいるのはあくまで身体だけの関係だが、警察官という立場、周囲から向けられる堅物で潔癖な女というイメージ、そして本人の愛想のなさもあって、そうした欲求を表に出せる空気がまったくない。
そのため周囲からは「恋愛に興味がない女」と誤解されている。
だが実際には欲求不満は深刻であり、しかも本人は自分の望みが一般的に歓迎されないことも理解している。
ゆえに、地上社会の規範や法律の外にいるトウヤの存在は、彼女にとって非常に都合が良い。
結婚も責任も将来設計も求めず、ただ欲望のまま関係を結べるかもしれない相手として、東郷恭子にとってトウヤは理想に近い存在となる。