川に棲む妖異、名もなき山の神、人魚に恋した男、アリゾナの闇に潜むスキンウォーカー、そして祈りを観測するAI——。
民俗学者・藤堂泰邦が少年から大人になるまでの軌跡を縦糸に、時代も国境も越えて七つの怪異が連なる連作短編。琴平、三原、仙台、アリゾナ、盛岡、東京。怖くて、笑えて、少し哀しい。
人はずっと、見えないものに名前をつけ、祈り、語り継いできた。その対象が妖怪からAIに変わっても、構造は変わらない——忘れられたものたちの声に、もう一度灯をともす物語。現代伝奇ロマンサイエンスフィクション。
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本編を構成する七つの物語は、人物、土地、時代、そして怪異をめぐる考察によって緊密に絡み合っている。
水辺妖怪の類型論、人魚伝説と海棲哺乳類の関係、スキンウォーカーと世界各地の憑依現象の比較——その考察は虚構の外皮を持ちながら、民俗学・博物学・比較文化論でもある。
時代は平安期から、昭和の場末スナック、消費税増税によるあおりをうけた1997年、義理チョコの廃止が叫ばれた2018年まで縦断するが、人が境界に立って何かを祈る構造は変わらない。
現代の私たちは、かつて妖怪や神の名で呼んでいたものを「データ」「アルゴリズム」「AI」と呼び直している。
しかしその構造は、空海が川の妖異に真言で語りかけたことや、ナバホの長老が夜の儀礼で闇と交渉したことと本質において変わらない。
忘れられた者の名前、語られなくなった伝承、凍りついた記憶、消えかけた歌
——この連作は、それらに繰り返し灯をともそうとする。怖くて、笑えて、美しくて、哀しい。
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