陰陽庁内部資料
分類:乙―秘(要監視対象)
件名:五神範洲 行使・擬人式神に関する評価
一、対象者
氏名:五神 範洲
所属:陰陽庁 東亰局(横浜分室配属)
家系:五神家(特異術者系譜)
二、確認事象
対象者が行使したとされる「擬人式神」は、
従来の式神分類に該当せず、術者の思考・判断・忌避感情を直接反映した形態変化を伴う。
当該術式は、対象者本人の証言によれば、
「念じた姿に形代が形を変えただけ」
「二度と同じ事ができる保証はない」
とされており、再現性を意図的に放棄した状態でのみ成立する術である。
三、危険性評価
擬人式神は以下の点において重大な問題を含む。
1.術者の判断放棄を補完する形で機能する
2.命令系統を必要としない
3.術者自身が責任を自覚する前に結果が確定する。
特に問題視すべきは、術者の倫理判断を経由せずに行動結果が発生する点である。
これは式神ではなく、「判断の代理生成」と見做すべき挙動である。
四、対象者適性所見
五神範洲は以下の特性を有する。
•自己評価が低い
•成果を術として認識しない
•危険行為を偶発事象として処理する傾向
•「成功した」と自覚した瞬間に再現不能となる性質
これらの要素が複合し、擬人式神という不安定な結果を生じさせている。
換言すれば、本人が術を信用していないことが最大の安定要因である。
五、組織的見解
五神範洲は有用である。
同時に、制御不能である。
本件に関して以下を決定事項とする。
1.擬人式神の体系化は行わない
2.対象者に再現を求めない
3.成果報告において術式名の明文化を避ける
4.「偶発的成功」として記録処理を行う
六、結論
五神範洲が行使した擬人式神は、陰陽庁の管理対象たり得ない。
しかし、管理できないからこそ現場で機能しているという矛盾を内包する。
本件は封印ではなく、黙認による経過観察を最適解とする。
七、備考
当該術式が再現可能となった場合、それは対象者が「自分の力を理解した」ことを意味する。
その時点で、擬人式神は消失するか、
もしくは――
より危険な形で固定化される可能性が高い。
―― ……やれやれじゃの。
人間は、分からんことほど立派な箱に入れたがる。