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『煙色の蒼天を旅して』注釈03

 第2話公開しました。例の如く初出の単語が盛り沢山ですので、注釈を。

・通貨キュミス
 連邦の通貨は「キュミス(銀)」です。文字通り銀本位制の通貨です。この通貨は連邦建国時に制定された新しい通貨です。1キュミス=現在の80円くらいです。
 海洋協商では金本位制が使われています。

・エトナン
 エトナンは、キビジュの大衆的な軽食です。器状に焼いた厚いパン(ナン)に、煮込んだ羊肉を入れます。熱々です。
 キビジュには似た料理で「エトゥニ」というものがあります。エトナンと違って、器状のパン生地に生の羊肉、チーズ、豆などを加えて口を閉じ、それから加熱します。
 完全な作者オリジナルです。語源は「エト(肉)」「ナン(パン/ナン)」「ウニ(小麦粉)」。

・アルキカ族
 ルース族よりもさらに北方、北極圏に居住する部族です。銀髪、赤目、褐色の肌を持つ者が多いです。一応、白系人種群(≒史実のコーカソイド)に属しますが、言語は由来が謎です。
 パティヤ家は昔、キビジュ王国(カラ王国征服以前のキビジュ帝国)がアルキカ族を征服した際に、帝都キビジュに出向し、職業軍人となった家です。

・連邦暦と命暦、キビジュの宗教
 連邦暦はその名の通り、連邦で新たに制定された太陽暦です。命暦は史実の西暦と同じものです。つまり、キリスト教(作中にもあります)の暦ですね。連邦暦は、命暦に180年足したものです。なんでそんなことを?
 キビジュ帝国時代は命暦を使用していました(正確には「キビジュ暦」と呼称)。キビジュ族の宗教は、キリスト教正統教会(≒史実の正教会)とテュクトゥル系の遊牧民の太陽(テングリ)信仰が混成した国教を持っていました。キビジュ国教では、皇家であるキビジュ家を最高指導者(カトリックで言う教皇)としていました。こと暦に関しては、前身である旧帝国のものよりも、身近な命暦が用いられたのです。
 そのキビジュ帝国を破壊してできた連邦で、命暦を使うわけにはいきません。しかも、連邦は全部族の平等を国是として掲げています。そこに一宗教の暦は使えません。しかし、命暦は優秀な太陽暦でした。そこで、新たに連邦暦を採用したのです。月の名前は旧帝国の暦のものを受け継ぎましたが、日付は命暦と一致しています。
 さらに、連邦は遊牧世界の通史作成を進めていました。命暦に180年足すと、おおよそヒューヌ族(≒史実のフン族/匈奴が西進してきたものという説を採用)がハザール海北岸に出現した頃になり、文献から統一した暦で通史を作れました。

・海洋協商諸国
北コロンボ連邦共和国……史実のアメリカ合衆国とカナダの地域。クークス大州戦争で債権国に躍り上がった新興大国。現地国名は North Corombo Allies でNCAと略される。「コロンボ」の語源はコロンブスです。アメリカ大陸ではなく「コロンボ大陸」。メソコロンボ運河≒史実のパナマ運河。太平洋と大西洋をつなぐ超重要航路ですが、この国が掌握しています。史実のパナマ共和国のあたりは、NCAの海外領土(飛地)です。

オステン帝国……史実のオスマン帝国。(史実の)アナトリア高原からオリエント地域、アラビア半島、北アフリカ、東アフリカに広がっています。クークス大州戦争後も滅びず生き残りました。(この辺りどうなったかは忘れました。)アレクサンドリア運河≒史実のスエズ運河はこの国の支配下にあります。何せ領土のど真ん中なので。

大華民国……史実の中華民国のようでそうではありません。大辰帝国(ダイジングルン/≒史実の清)がエンクラント王国(後述)とイェンツェ=カルマール同盟(後述)を中心とする植民地獲得競争の中で虫食いになって崩壊したのち、反クークスを掲げた華民党が勢力を拡大し、大華世界のほとんどを統一しました。

エンクラント王国……史実のイギリス。産業革命を起こしてないけど、浮遊ガスを見つけたのはこの国。

イェンツェ=カルマール同盟……スカンディナヴィア半島とユトランド半島(現在のデンマークのあたり)の周辺を合わせた地域。北地中海(=史実のバルト海)沿岸の商業自治都市の連合体であるイェンツェ都市同盟(≒史実のハンザ都市同盟)と、カルマール王国(≒史実のカルマル同盟/北欧3カ国の連合王国)がカルマール(実在の都市)で結んだ協約による国家。産業革命を起こしました。公用語はイェンツェ正書語(元ネタはハンザ正書、現在のドイツの正書)。

秋津王国……史実の大日本帝国。「ジューシン」の読みは盛京(ムグデン)語(≒史実の北京語)。「天皇」がいますが、外向きには「王」と言っているのでこの国名。ルフィナの父アンテンが帝国軍大佐だった頃、旻洲地方(≒史実の満洲)を巡ってキビジュ帝国に勝利しています。(アンテンは帝国極東空軍の第二航空艦隊の艦隊長として戦闘に参加しました。)

イラン王国……史実のカージャール朝ペルシャ帝国。レザー・ハーンに滅ぼされなかった。隣接するキビジュ族と仲が良く、隣国オステン帝国とは仲が悪い。イスラームの宗派、シーア派とスンニ派の対立のせいです。

・マッシリア終戦条約
 フランク共和国(≒史実のフランス共和国)南岸、マッシリア(≒史実のマルセイユ/「マッシリア」はローマ時代の名前)で結ばれたクークス大州戦争の講和条約。

・カラコルムとムンガル族
 旧帝国の首都カラコルムは、ムンガル高原(=史実のモンゴル高原)中央部に位置する(実在した)都市です。旧帝国は本来「ムンガル帝国」と呼ばれるべきですが、キビジュ帝国は「旧帝国」と呼称しました。その中心にいたのが、ムンガル族(≒史実のモンゴル族)です。
 カラコルムはその後、ムンガル族の国家カラ王国の首都となり、キビジュ帝国(王国)の征服後、東部の内政を司る東公(キビジュ皇帝皇太子)の政府が置かれる東公都となりました。ケフィア同様の大都市なので、連邦西方軍本部と士官学校が置かれています。


なっが。

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