私にとって初めての娘が生まれて、もうすぐ一年になる。
今から一年前。娘の誕生とともに、私は一年弱にわたる長期の育児休業を取得することになった。
当時の私は、職場で自分にかかっていた負荷の大きさや、所属していたチームのメンバーとの仕事に対する意識の乖離について、かなり深刻に悩んでいた。もう二度とあの職場には戻りたくない。そう考えるほどだった。
会社を辞めよう。
娘が生まれたばかりで、経済的にも決して余裕があるとは言えない状況だった。それでも、その決意だけは揺るがなかった。
一方で、これまでの自分のキャリアを振り返ると、「年齢に対してスキルが伴っていないのではないか」という、もともとの悲観的な考えも頭をもたげてくる。
育児休業のその先にある職場復帰を思うたび、気分が沈み、不眠に悩まされる日も少なくなかった。
そんなふうに自分の今後について悶々と考え続けた末、ある日なぜか、
「もはや自分に残された道は、ラノベ作家しかないのではないか」
という結論に至った。
我ながら、なぜそうなったのかはよく分からない。
ともあれ、新人賞への応募を目標に、一日三千字というノルマを自分に課した。妻と娘が寝静まった深夜から早朝にかけて、眠気と戦いながら少しずつ書き進めた。
そうして完成したのが、『エグゾアルカナセイヴィアー』という作品だった。
今になって振り返ると、主人公ノルの物語冒頭に漂うダウナーな雰囲気や、突如として国土を蹂躙され、徹底的に破壊されていくサンクタナイトの姿には、当時の自分が抱えていた将来への不安が、少なからず反映されていたのではないかと思う。
もちろん、毎晩のように心が折れそうになった。
それでも、
「この程度の困難で挫折するようでは、執筆業など到底務まらない」
と自分を奮い立たせていた。
今となっては、それも良い思い出だ。
そして、ここで一つ断っておきたい。
執筆していた期間も、当然ながら家事や育児にはフルコミットしていた。
赤ちゃんの着替えやおむつ替えの速さについては、世の新米パパたちにも決して引けを取らないという、よく分からない自信がある。
毎日の絵本の読み聞かせも欠かさず続けることができた。
結果として、一日ごとの娘の成長をこの目で直接感じることができたこの一年弱は、私の人生において最高の宝物の一つになったと思う。
そうして何とか書き上げた『エグゾアルカナセイヴィアー』だったが、結果については、まあ、案の定というべきか、振るわなかった。
それでも、不思議なことに達成感は残った。そして今でも、物語の続きを書きたいという気持ちは消えていない。
ただ、育児休業を終えた現在、私は引き継ぎやその他諸々の手続きを進めたうえで、勤めていた会社を退職することにした。
そしてありがたいことに、転職先も無事に決まった。
それに伴い、現在暮らしている北海道から東京へ引っ越すことにもなった。
以上が、作品の続きを書く時間がなかなか取れていないことについての、長大な言い訳である。
『エグゾアルカナセイヴィアー』を読んでくださった数少ない読者の中で、「次」を待ってくださっている方がどれほどいるのかは分からない。
それでも、もし待ってくださっている方がいるのであれば、もうしばらく時間をいただければと思う。
この一年で学んだことは多い。
その中でも一番大きな学びは、
「ラノベ作家になれなくても、人生は続くし、何とかなる」
ということだった。
もちろん、新しい環境に対する不安は尽きない。
それでも、あの一年を乗り越えた今なら、以前ほど悲観的には考えていない。
さて、これからどうなることやら。
とりあえず、娘が寝静まった後に三千字を書いていたあの頃の自分に負けないくらいには、何とかやっていこうと思う。