ずっと、ずっと走り続けていた。
開始の合図と共に、私は百メートルを一直線に駆け抜ける。
昔から私には走る才能があって、ただそれだけで生きてきた。
私にとっては勝つことは当たり前で、それが日常だった。
それは高校三年生のでの夏の大会。
当たり前のようにレギュラーになって、地区予選も難なく勝って。
全国前の決勝での出来事。
「山下、いけるか?」
「はいっ!」
顧問の低い声が、ロッカーの扉を震わせた。
その時の私には負ける事なんて頭になくて、ただただ、勝ったあとのことを漠然と想像していたと思う。
でもそれは、すぐに幻想なんだと思い知らされる。
審判の合図と共に足を蹴り上げて、私はただひたすらに真っ直ぐ加速した。
目の前に私を遮るものはなく、視界にあるのはゴールのずっと奥。ストップウォッチを持っている審判と、応援を送ってくれる仲間たち。
でも、そんな私を風できり裂くように、長い黒い髪をなびかせては、そいつは私の視界を横切った。
……――!!
一瞬焦ったけれど、その時にはもう競技は終わっていて、見上げた電光掲示板には、私の名前が2位の所に映し出されていた。
自分でも夢なんじゃないかと思うくらい、現実味がないのに、頬から垂れる汗の感覚は確かにあって、それが気持ち悪くて。
現実味がないまま、ぼやけた視界で視線を落とすと、私より速かった彼女は汗一つかくことなく、清々しく電光掲示板を見上げていた。
私の高校最後の青春は、その日静かに落ちる夕日と一緒に終わりを告げた。そして今でも、あまりにも無表情だったその顔が忘れられない。
四月三日――。
つま先に残るやるせなさを抱えながら、私は大学生になっていた。
仮タイトル【山下とコウノトリ】
みたいな作品を書いてます。
完成したら、公開する予定です。
タイトルは、もう少しWeb小説っぽい読んでもらえそうなわかりやすいタイトル考える予定なので、公開するタイミングではタイトル変わってるかも。