はい。ここはかなり重要な反例です。
数字だけ並べると、ほとんど同格です。
| 作品 | 参考点 | 公開戦闘力 | 実際の扱い |
| ----------------------- | -------: | -------: | ------------------- |
| 188_6『攫われた聖女』 | 8.33 | 8.17 | 公開見送り・ボツ |
| 『自分が主人公じゃないことにようやく気付いた』 | 8.34 | 8.20 | ★10,621のWeb大ヒット |
この結果から言えるのは、今回の評価がおかしいというより、「公開戦闘力」という指標を現実の★獲得数そのものと同一視してはいけないということです。
むしろ、旧評価の9.5〜9.7が犯していた可能性の高い誤りが、ここではっきり見えます。
## 作品本文の強さと、実際にヒットするかは別
188_6は本文だけ読めばかなり強い。
第1話の、
> 断罪されている悪役令嬢が、虐待されている聖女候補をその場で攫う
という入口も弱くありません。
人物関係も、
> 攫う
> →守る
> →フィアナ自身が選ぶ
> →最終的にはヴァレリアにも決定権を渡さない
まで綺麗に変化する。
だから公開戦闘力8.17をつけること自体には、今も違和感がありません。
一方で『主人公じゃない』も、本文だけなら8.20程度。
ところが現実には片方が未公開、片方が★10,621。
本文の公開性能が0.03しか違わないのに、観測された結果は桁違いです。
ならば当然、
> 「公開戦闘力8.20なら★10,000級」
という尺度ではない。
そう解釈すべきです。
## 『主人公じゃない』には、本文評価とは別のヒット条件があります
かなり大きいのが企画の即時理解性です。
『主人公じゃない』は、
> かつて天才だった男
> ↓
> 自分が物語の主人公ではなかったと悟って折れる
> ↓
> 才能のない少女を教える
> ↓
> 教えることで自分も救われる
という構図が非常に説明しやすい。
しかもWeb読者には、
* 元天才
* 隠遁
* 実は最強
* 師弟
* 成長
* 教え子から慕われる
* 魔法学院
* スローライフ
* 後から「先生やっぱり凄かった」報酬
という既存の読書欲求へ接続しやすい部品が大量にあります。
特にアーサーの「俺は主人公じゃなかった」という自己認識と、読者から見る「いや、お前めちゃくちゃ主人公じゃん」のズレは、文学的には危険要因ですが、Webエンタメではむしろ報酬にもなります。
本人は落ちぶれたと思っている。
しかし周囲から見ると伝説級。
教え子も慕ってくれる。
これは強いです。
## 188_6は逆に、作品が深くなるほど初期棚から離れる
188_6の入口は、
> 婚約破棄
> 悪役令嬢
> 聖女
> 誘拐
> 百合
です。
かなり強い。
ところが物語が進むと、
> 逃亡百合
> ↓
> 聖域修復
> ↓
> 一極集中型制度の問題
> ↓
> 分散運用
> ↓
> 救済者と被救済者の権力関係
> ↓
> 自律と制度改革
へ進む。
作品としては良くなる一方、棚としては難しくなる。
だから私が8.17をつけた時にも、
> 参考点8.33に対して、公開8.17
として少し落としていました。
ただ、それでも「公開すれば大ヒットする」とまでは言っていません。
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## そして「公開見送り」はさらに別問題です
188_6がボツになったこと自体は、作品の市場失敗を意味しません。
公開されていない以上、
> ★が伸びなかった
> 読者が離脱した
> ランキングに入れなかった
という実測データがありません。
したがって、
★10,621 vs ★0
という比較ではないんです。
正確には、
> 『主人公じゃない』=市場へ投入されて★10,621まで伸びた
> 188_6=市場テストそのものが行われなかった
です。
これは大きな違いです。
だから188_6について「公開8.17だったのに売れなかった」という反証にはなりません。
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# ただし、それでも評価体系への重要な警告にはなります
ここが一番大事です。
もし「公開戦闘力」を、
> 現実のWebヒット規模を高精度で予測する数字
として使いたいなら、現在の六軸では足りません。
なぜなら現在は主として、
* 入口熱
* 毎話報酬
* 外部イベント
* 次話牽引
* 棚適性
* 長編耐久
を本文から見ています。
でも実際のWebヒットには、それ以外に、
タイトル・キャッチ・あらすじのCTR、投稿時期、ジャンル母数、ランキング流入、初動、既存読者、話数更新頻度、作品ページでの見え方、読者層との時流適合
などがかなり効きます。
そして『主人公じゃない』は、おそらくこの作品外を含めた「発見されやすさ・クリックされやすさ・現在のWeb読者との接続」が非常に強かった可能性があります。
それを本文だけから算定する公開戦闘力へ全部押し込もうとすると、
> ★10,621だから9.6!
という昔の事故に戻ってしまいます。
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## ですから、私はむしろ今の数字を維持したいです
この二作がほぼ同点なのは、変ではありません。
それは、
> 「同じくらい★が取れる」
という意味ではなく、
> 「本文を未知のWeb読者へ渡したときに備えている読者獲得・継続性能が、本文単体では同じ8点前半帯に見える」
という意味です。
その上で現実の結果には巨大な分散がある。
これが自然です。
そして実績を見た後に『主人公じゃない』だけを8.2→9.5へ上げるのは、まさに以前の失敗を再現します。
むしろ興味深いのは、
> 188_6 8.17/未公開
>
> 主人公じゃない 8.20/★10,621
という組み合わせそのものが、作品評価と市場実績を分離する必要性を非常に綺麗に証明していることです。
さらに言えば、これは「公開戦闘力」という名称を少し慎重に扱うべき事例でもあります。実態は現状、「本文内在的なWeb適性」に近い。現実のヒット確率そのものではない、と定義しておくと評価体系がかなり安定すると思います。
そこは★10,621という実績を知ったからといって無理に8.20を上げるべきではない一方、評価体系そのものに対するかなり重要な警告だと思います。
現在の数字をそのまま置くと、
| 作品 | 参考点 | 公開戦闘力 | 実績 |
| ------------- | --------: | -------: | ----------- |
| Silent Tomcat | 8.40〜8.42 | 8.70 | ― |
| 主人公じゃない | 8.34 | 8.20 | ★10,621 |
です。
参考点の差は約0.07。これはほぼ同格帯です。
ところが公開戦闘力では約0.50差。かなり大きい。
にもかかわらず、後者は現実に★1万を突破している。
これは少なくとも、
> 「公開戦闘力8.70の作品は8.20の作品より現実のWeb市場でかなり成功しやすい」
と数字を読むことはできない、と示しています。
### むしろ今回作には、Silent TomcatよりWebで爆発しやすい性質がある
今回の全文を振り返ると、私は公開戦闘力評価で文章制御・長編圧縮・密度をかなり重く見ています。
Silent Tomcatはそこが強い。
一方『主人公じゃない』には、別種の強い報酬機械があります。
アーサーは、
> 自分は主人公ではなかった
> ↓
> 傷ついて隠遁している
> ↓
> しかし実際には伝説級の天才
> ↓
> 弟子に教えると圧倒的に強い
> ↓
> 弟子から敬愛される
> ↓
> 本人も少しずつ救われる
という構造です。
Web読者から見ると、これはかなり気持ちいい。
しかもシズ自身も、
> 魔術を使えない
> →成功する
> →成長する
> →先生を慕う
> →外へ出る
> →先生の凄さを改めて知る
> →「私が先生を特別にする」
と、非常に分かりやすく報酬を返してきます。
文学的完成度を少し削っている説明過多ささえ、Webでは、
> 感情を取りこぼしにくい
> 誰が誰をどう思っているか明瞭
> 報酬が分かりやすい
というプラスに反転する場合があります。
ここはSilent Tomcat型の「制御された文章」を高く評価するだけでは拾い切れない部分です。
## 特に疑うべきなのは「毎話報酬」と「棚適性」
公開戦闘力8.20を出した際、私は長編としての冗長性をかなり重く見ました。
それ自体は撤回しません。
ただ、Web市場という観点では、
「冗長だから弱い」
とは限りません。
この作品にはかなり頻繁に、
* シズかわいい
* アーサー先生すごい
* 弟子に慕われる
* 新しい魔術ができる
* 教師として褒める
* 日常コメディ
* 実はアーサーはとんでもない人物
* 周囲がアーサーの凄さに驚く
* タラスかわいい
* タラスが成長する
という軽い報酬が大量に入っています。
一つ一つの完成度はSilent Tomcatほど高くなくても、
> 毎日・毎話読む動機としては非常に強い
可能性がある。
つまり、こちらの「毎話報酬」評価で、報酬の質を見すぎて、報酬の頻度と即時性を過小評価していた可能性があります。
さらに棚適性もそうです。
文学的に見ると、
> 師弟再生もの
> →学院もの
> →最強もの
> →育成もの
> →王女・滅亡国家
と広がるため、棚が少し動きます。
でもWeb読者からすると、
> 好きなものがどんどん追加される
だけかもしれません。
「棚がぶれる」という減点が、実市場ではそのまま減点にならない可能性があります。
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# Silent Tomcat8.70との比較で浮かぶ問題
私はここでSilent Tomcatを下げる必要もないと思っています。
Silent Tomcatは、
> 投入された読者へ、本文の強みを効率よく届ける能力
が高い。
だから8.70でいい。
しかし今回作には、
> 多少文章がだぶついても、読者が長く居座りたくなる報酬環境
がある。
これは別能力です。
つまり現行の公開戦闘力六軸が、
「作品としての公開完成度」
には強いが、
「Web連載として中毒的に読者を抱える力」
を少し十分に測れていない可能性があります。
★10,621という結果は、こちらを疑わせます。
## ただし、ここで8.20→8.7に上げるのは駄目です
ここは大事です。
★数を見た後で、
> 「実績がすごいから、やっぱり毎話報酬9.2!」
とやれば、旧9.6事故の再演です。
正しい順序は、
> 独立本文評価8.20は保存する。
>
> ↓
>
> 実績★10,621との残差を観測する。
>
> ↓
>
> なぜ本文評価では拾えなかったのか、評価モデル側を監査する。
です。
そして今回の残差は無視できないほど大きい。
188_6が8.17で未公開だっただけなら「実測不能」で終わります。
しかし今回は、
> Silent Tomcatより公開戦闘力が0.5低いと判定した作品が、現実には★10,621まで到達した
という実測があります。
これは評価体系にとってかなり価値のある校正材料です。
### 私なら今後、「公開戦闘力」の意味をこう限定します
現行六軸による公開戦闘力は、
> 本文内在的な公開品質・読者伝達効率
と考える。
そして別に、
> Webヒット適性
を必要なら見る。
後者では特に、
* 欲望充足の分かりやすさ
* 反復可能な報酬装置
* キャラクターへの滞在欲
* 「次の大事件」ではなく「次もこの人たちを見たい」という継続欲
* 一話単位の軽い快感の頻度
* Webジャンルとの欲望適合
を見る。
『主人公じゃない』は、おそらくこの後者が非常に強い。
Silent Tomcatは本文商品として優秀。
『主人公じゃない』はそれより粗いが、Web連載として住み着きやすい。
★10,621を考えると、この差を無視する方が不自然だと思います。
なので今回の事例、かなり重要です。旧9.6が正しかったのではなく、旧9.6は結果から逆算した事故。しかし現在の8.20も「現実のヒット力」を全部表しているわけではない。 この二つを同時に認めるのが、一番整合的です。