この物語に時間を預けてくださり、ありがとうございます。
あとがきでも触れた通り、第一話は3月3日の皆既月食を意識していました。
当日の天気が分からなかったので、曇り・雨・予報が外れて晴れの3パターンを用意して、
公開当日の朝、天気予報を見て雨のパターンを出すと最終的に決めました。
さて。
第三話では、男の恋人が殺された夜も「赤い月」だったことがさりげなく示されています。
では、この皆既月食も現実の日付とリンクしているのか?
残念ながら、これは架空の日です。
物語の中では、第二話から第五話(第一話)の事件まで約二年の月日が流れていますが、
現実には2024年に皆既月食がありませんでした。
というか、皆既月食はつい半年前(2025年9月)にあったんです。
天文ファンとしては嬉しいのですが、今回に限っては
「なんでそんな直近に起きるんだ!」
と、ちょっと思っちゃいました。
もうひとつ。
次に日本で見られる皆既月食は、2029年です。
実は、第二話の月食を3月3日に設定して、第一話の方を2029年の裏設定にする案もありました。
現実の時間の中で3年後に皆既月食を迎えたとき、
あの温室の夜が現実の空と重なる——という時限装置にしたいなと。
でも却下しました。
なぜなら——
2029年の皆既月食は1月1日だからです。
しかも年が明けてすぐ、0時7分ごろから月が欠け始めるという、
あまりにもドラマティックな天体ショー。
めでたすぎるんです!
天体現象は、物語の都合には合わせてくれませんね。
でも、それがいい。
希望通りに起きてくれない空を相手に、物語の夜をどう組むかを考える時間が、
書いていて楽しかったので。