鍵が三度鳴って扉が開くと、通路の冷たい空気と油の匂いが濃く流れ込み、角灯を提げた男の輪郭が、ぼやけた視界に黒い塊となって浮かんだ。背が高く、肩幅がある。それ以上は、眼鏡がなくては分からなかった。
「リーサ・アルヴェス殿だな」
低くて、温度というものがきれいに取り除かれた声だった。
「はい」
返事は、かすれて割れた。
「サン・ビセンテ騎士団の団長、ルシアーノ・バルデスだ」
名前は知っていた。王都の治安と刑の執行を預かるサン・ビセンテ騎士団の団長で、先の戦で前団長が戦死した際、その遺言で後を託された、従士上がりの二十四の青年だ。
人を斬った数と笑った回数の少なさで王都の噂になっているこの人は、明朝の私の処刑の責任者でもある。