パッとしない自分。
好きでもない仕事に明け暮れる日々。
仕事終わり、家とは反対方向に車を走らせて
縁もゆかりも、用事さえもない遠い町を通り過ぎるときの事。
縁石にカラスがロケットの発射体勢の様に横たわってるじゃありませんか。
『見上げてないで飛べばいいじゃん。あるんでしょ?羽』
バックミラー越しに聞いてもカラスは答えません。
何故なら、命を終えているからです。
それでも私は言いました。
『飛べるって、良いよね。どこでも行けちゃうじゃん』
脳裏に響くガラガラ声。さっきのあの子かな?
『で?飛べるからってなんだって?』
嫌味かな?私は羽があったら逃げたい。
パッとしない自分。好きじゃない仕事。
お金の奴隷になってる日々。孤独。
けど。あの子はそんな私を嗤うのです。
『くだらない。俺たちの羽は生きる為にある。何処かへ行けたって、風に吹かれて、食いっぱぐれちゃ終いよ』
反撃が始まるみたいです。
『アンタらおニンゲン様々は生きてることが大前提でその他に悩んでる。羨ましかねぇが、贅沢な話だよな?』
贅沢?贅沢なモンか。
不便だ。窮屈だ。不格好だ。苦痛だ。
それでもカラスは続けます。
『仕事だ、金だ、それさえあれば生きてける。軽いもんなら怪我や病気だってちょちょいのちょいさ。オレ達にあんのは羽と嘴と爪、それだけだ』
いつしかカラスの声は聞こえなくなりました。
振り切ったんでしょうね。
まだ私はこれからも『生まれ変わったらニンゲン以外が良い』と言い続けるのでしょうか?はたまた『ニンゲンやってて良かった。次もニンゲンが良いなぁ』と言えるのでしょうか。
…オチは特にありません。
もう既に私の気分も、あのカラスも堕ちてるからです。
あの子はきっと既に交通パトロールのひとに黒い袋って棺桶で燃やされてるんでしょうが。
私の心はちっとも燃えません。
今回も読んでくれてありがとうございました。