第25話を公開しました。
今回は綾乃編の後日談であり、「許す」と「訴えない」は同じなのかという話でもあります。
第20話から第24話まで、読者の皆様が気になっていた部分の一つだと思います。
「何故照臣は刑事告訴しないのか」です。
今回、その理由を照臣自身の言葉で語らせました。
正直な話、照臣は綾乃を許していません。
むしろ、
・怖かった
・怒っている
・二度と同じ事は許さない
という認識です。
だからこそ今回、「許すとは書かないで下さい」という言葉を入れました。
ここは個人的にかなり重要な場面です。
今回書きたかったのは、優しさや赦しではありません。
「被害者が何を守ろうとしているのか」です。
照臣は研究所時代、無実を証明する為に戦い、勝ちました。
しかし失った時間と立場は戻りませんでした。
だから今回の判断は、「戦わない」ではなく、「戦う場所を選ぶ」です。
終盤の「また、事実を説明する為だけに人生の時間を使う事が怖い」という台詞は、その集約でした。
また今回、紗季の役割もかなり大きかったと思います。
・照臣の理屈は正しい。
・クラストロンへの影響も正しい。
・社員を巻き込まないという考えも正しい。
しかし紗季は、「感情的に納得できない」と言います。
そこが紗季らしい部分だと思っています。
個人的に好きなのは、最後のやり取りです。
「最初から、そう言いなさいよ!」
「今まで説明した内容と同じだ」
「全然違うわよ!」
「何処が?」
「情緒!」
照臣らしいし、紗季らしい。
そして二人らしい会話だったかなと思いますw
一方で、今回一番怖いのは綾乃です。
照臣は、
・接触禁止
・技術系イベントからの排除
・調査禁止
・資料廃棄
・違反時の刑事・民事対応
という非常に明確な線を引きました。
ところが綾乃は、そこから「やっぱり分かって下さっている」を先に読んでしまう。
そして、照臣が自分の生活を守る為に選んだ境界線を、「まだ私を理解していないだけ」と解釈してしまう。
ここは今回のタイトル以上に重要な場面でした。
今回のサブタイトルは「訴えない理由」です。
しかし本質的には、「何故訴えないのか」だけではなく、「何故境界線を引くのか」という話でもありました。
照臣は綾乃を許した訳ではありません。
社員を人質に取らないと決めただけです。
そして真澄が言う通り、その違いを理解できていたら、そもそも今回の事件は起きていません。
追伸
いつも感想・応援・誤字報告ありがとうございます。
今回は派手な展開ではありませんが、作者としては非常に重要な回でした。
特に「許さない」と「告訴しない」は両立する、という部分は丁寧に描いたつもりです。
今後とも宜しくお願い致します。