今日はあの職人がやって来た。
なんか大きな箱を持って。
中身は彼の商品だった。
「これとかどう?」
「い、いいね」
いや、モノはいい。いいのだけど、どうしよう。
まあまあ想定外の大きさだ。
これ使える家ってどれくらいあるのか…CMとかでは見たことあるけど…
何と言おうかと迷っていたら、本当にたまたまだけど、別のお客さんが来た。
彼は年若いイケメン君で、広告代理店でマーケッターなるものを仕事にしていた。
ちなみに僕と職人は同年代で、SNSオフラインな人間だ。それから一回り以上離れているのが年若いオンラインなイケメン君だ。
僕と職人のように閉じた二人が閉じた話をしても、やはり閉じたままだろうと思い、イケメン君に相談してみた。
いつも彼と個別で話す内容は、若い子の恋愛事情とか性事情とかだけど、よし、巻き込ん…繋いでしまおう。
そうしてコーヒーとお菓子を囲みながらの座談会が始まった。
すると我々オフラインズの知らない世界、1分動画の話だったり、各種SNSの長所短所だったり、オンラインショップへの動線の作り方なんかを事細かに教えてくれた。
僕はふむふむとメモをとりながら聴いていたのだけど、職人は…こいつ…全然メモらねぇ。
しかも仏頂面というか…。
それから職人と同系統の動画を例で見せてくれたりするけど、やれこんなの誰が見るのだとか、やれこんなの面白くないだろ、なんて…
イケメン君はそれでも僕の顔を立てて、怒らずに丁寧に教えてくれてるけど…
なっちゃいねぇ。
だから世の中の職人が誤解されるんだよ…
とりあえず僕は不穏な空気にならないよう、ボランチに徹することにした。
でも僕のパスを、イケメン君は縦に横にと広げてくれるのに、オフライン職人が少しズレた話で戻してきて、すぐに攻撃の話が閉じてしまう。
まるで古き悪き時代の日本代表だ。
…あかん。
このままはあかん。
そうだ。今日は顔合わせに徹しよう。
おそらく職人は、人見知りなのだ。
反対にイケメン君は、コミュちからが強いのだ。
まさに陰キャと陽キャなのだ。
こんな時、中庸モブな僕はどうすれば良いのか…。
よし、こんな時は女の子だ。
性格とかじゃなくてどんな子が好みか振ってみよう。
そう考え、話が止まった瞬間、強引に差し込んでみた。
「君ら、どんな子好き?」
すると、なんということでしょう。
盛り上がるじゃありませんか。
気づけば三時間も経っていた。
そうして最終的には、僕を置いて仲良くなってしまいました。
……。
職人、何ですぐオンラインになってんだよ…それにそれはぽっちゃりとは言わないんだよ…
イケメン君、君わっるいわぁ。しかもそのもう一台、社用のスマホじゃなかったんだ…
僕? 僕はちゃんとバランス取って、NTRを披露したよ?
男三人居たら、だいたい男側が酷くなっちゃうからね。
酷い女でバランス取らないと。
僕ボランチだからね。
まあ、つまり今日は仕事、出来なかったんだよね…あはは…はぁ…
明日からまた頑張ろ。
墨色