またまた隠れムキムキ君がやってきた。
またしても腰にじゃらじゃらつけているけど脚立が小さい。
どうしたんだ。
君のスペックはそんなもんじゃないだろう?
「調子はどうですか?」
「おかげ様で快適です」
ヒンヤリィィィイイと叫びたいところを我慢して和やかに会話する僕。
小さな脚立を室内側のエアコンの下に設置する彼。
コンセントを抜き、エアコンから壁までのびる化粧管?をベキベキと外す。
あれ?室内なの?そう思ったがもちろん黙ってる。
ただ、一見するとぶっ壊してるようにも見える。
やだ強引。
素敵。
「ちゃんと元通りにしますから」
「あ、はい」
不安を和らげるためか、隠れムキムキくんから僕に優しい言葉。
もちろん不安など僕は抱えていない。
不安か期待かギラギラとした僕のこの澱んだ眼を見ればわかるだろうに。
くそっ、勘違い系かよ。
ますます唆るんだが。
違う違う。
あかんて。
エアコンからはダクト2本とドレインホース1本、3色電線1束が伸びていた。
続いて室外機側の外壁を一緒に確認するもそのうちドレインホースだけが壁から出ていない。
そういえば……おかしいな?
「まさか…切られた?」
呟く隠れムキムキくん。
「…パ、パイプカットですか…?」
あのムキムキくんは、パイプカットしてるのか? 責任は取らずに済むってか?
「かもしれません」
あ、多分意味わかってない。
18歳の時そんな言葉知らなかったなぁ。
そんなこんなでいろいろと見てもらってもドレインホースだけが外壁から出ていない。おそらくそのホースだけ一階部分に回してるのでは、と予想を立てる隠れムキムキくん。
「つまり…?」
「何も…出来ないですね」
「……というかあの室外機の穴は?」
「ああ、あれ、無意味です」
無意味な穴とな?
どうやらドレインホースを室外機に取り付けた場合は、あの穴から出すらしく、今回はそれがそもそも出ていない。
おそらく前の施工会社が何の意図かわからないが配管と繋いでいたのだと言う。
しかも滅多に室外機内部に水は溜まらないそうで、そこから水がもれるとすれば、雨の日くらいだそうな。
「あの穴から出ても結局下も濡れますから…」
「…」
くそっ、いちいち唆るぜ。
あかんあかん。
つまり放っておいても問題ないらしい。
では何故こんなことに?
あのメーカーのお姉さんは?
そう尋ねてみると、なんででしょうねとハニカミながら化粧とか本体を直す隠れムキムキくん。ついでにコンセントまでビローンと不細工に伸びていた電気コードもいい長さに。
とりあえずあの穴と配管は修理屋の範疇にないらしく、彼にはどうすることもできないのだそうな。
そりゃそうか。本体動いてるし。
おそらくあのメーカーのお姉さんも勘違いしたのだろう。
とりあえずそのままの状態が気持ち悪いならホムセンとかに一応あるという。
前回は中古で良ければと捨てるはずだったホースを持ってきてくれていたみたいで、でも径が合わなかったようだ。説明も難しく、わざわざまた来てくれたみたい。
──トクン。
なんだよ…
この上さらに素敵かよ…
……。
…。
。
こうして、僕のいろいろな戦いは終わった。
見上げた室外機の穴と配管は、とりあえずこの夏の思い出としてまだまだそのままにしておこうと思う。
いー天気だ。
あっつぅい。
入ろ入ろ。
ヒンヤリィィィイイ!!