学校で着実に色分けし、お家ではせっせと合体させながらマフラーを編む。
何にも特技のないわたしが唯一できるゴム編み。
中学から始めたこの編み物は何がなんでも虹色に仕上げたいと思って始めたマフラーだ。
この中学最後のクリスマスで、ようやく虹がかかるかもしれない。
ファンクラブのことは、ノノちゃんと石崎くんに任せよう。
それと、不可解なことがあった。あれから何度か病院に訪れるも、裕くんがいない。
看護師さんに聞く場所に行けどいない。
やっとの思いで見つけ出したら、隣のクラスの森田さんと一緒にいる。
彼女は中学に上がった時に入ってきた転校生だった。身体が弱く、保健室の常連で、いつも病院に通ってるって聞いていた。
いつの間に仲良く…? 入院してから?
そして今日はわーきゃー言って、あの見慣れない木まで向かっていった。あんなにくっついて…
でも裕くんは…邪険にすれど、心からの抵抗は見せてない…心の中に、嵐が、雷鳴が、巻き起こる。
裕くんが絵を描き始めた。
彼女は離れていく。
……
彼女は公園のトイレに入っていった。
ここなら誰にも邪魔されない。
「何か用?」
どうやら尾けたことは見抜かれていたらしい。
なら、丁度良い。
「…森田さんは裕くんとどういう関係なの?」
「いきなり何? はぁ…仕方ないなぁ。うーん…千切っても…千切れない…コラージュみたいな関係かな?」
適当に答えているようで、なんとなく違う色。彼女にとっては深い繋がり…みたいだ。
でもそんなの聞いてない。
「…そんなの…裕くんから聞いたことない」
「逆に聞きたいんだけど…姫にとって柏木くんってどんな存在?」
「…どんな?」
「ええ、彼はあなたを見て吐いてましたけど…?」
「…それは…何か誤解があって…」
「あは。誤解も何もないですよ」
「何を言って…」
「…んん? ズレたのかな…佐渡神社は?」
「…何?」
「玉石公園のトイレは?」
「だから何! 何かわたしと関係あるの!?」
「大有りなんですけど…ふむふむ…今回は違うのか…何やってんだ三好は…」
「あいつと何か関係あるのかお前は!」
「…あいつ…? いや、関係ないですよ? そっか…変わったのか…ふは。まあ変わったところで変わらないけどね」
「あのクズがどうしたって言うの! まさか病院に?!」
「クズ…? いや、病院には毎日居ますけど、来てないですよ?」
「良かった…」
「良かった…? 何を言って…?」
「…?」
「ああ、良いです良いです。あ、今の柏木くんって苦手な花があるんですよ。だから病室には持って行かないでください」
「…花? 裕くんはあんまり詳しくない、はず…苦手?」
「円谷華という猛毒の花。それが彼の一番嫌いな花の名前です。会うと青い顔、してませんでしたか?」
「……」
「んふ。だから会うのはおすすめしませんよ。多分また吐きますから。でもまあ、会ってみたらどうです? 彼、あなたのこと……嫌いですよ?」
「…そんなこと! …ない…」
「あはは。ほら、今の絵を描いている彼。どうですか? 姫と会った時と比べてどうでしたか?」
「…楽し…そう…だった…なんで…」
「んふ。でしょう? こんなこと…こんなことは初めてなんだよ…! だから……だから姫は三好とパコっといてッ! 私と柏木くんは初恋同士なの! 邪魔しないでよ!」
「初恋なんて嘘つかないで!! パコが何か知らないけど邪魔はお前でしょ!!」
この後無茶苦茶ケンカした。