この世界は、平和そのものの桃源郷だった。時が穏やかに流れる悠久の楽園には、不幸も絶望も、刺激さえなかった。
この世界には、秘密があった。
封じられた宝箱――その中には、いくつもの宝石――厄災が眠っていた。
しかしある時、ある者が宝箱を開けてしまった。種族をパンドラと言い、好奇心を秘めた存在だった。箱を開けた瞬間、厄災は散らばる。幾多もの煌めきが、流星のように飛翔した。
パンドラは慌てて蓋を閉めたものの、時すでに遅し。一つの宝石を除き、もぬけの殻であった。
散らばった宝石――厄災はそれぞれのセカイ――モノガタリに落ち、時には不幸を、時には絶望を、時には刺激をまき散らす。
さて、残された一つの宝石。それは彩雲のように輝き、希望にあふれていた。パンドラは、希望をもって、セカイを観測し続けている。