あらすじ
古新聞が好きな高校生の僕は、ある日、三十年前の新聞に奇妙な一文を見つけた。
――数字を信じるな。
橋を見ろ。
記事によれば、総工費八百億円を投じた「東邦中央大橋」は、すでに完成しているらしい。
ところが、現在の地図をいくら探しても、そんな橋は存在しなかった。
気になって古新聞を調べ始めた僕は、さらに奇妙な事実に気づく。別の年代の新聞にも、同じ橋の完成記事が載っていたのだ。
しかも、その前後には、建設計画の発表や着工を報じる記事まで残されている。 完成したはずの橋が、何度も完成している。
誤植か。
それとも、誰かが意図的に記録を書き換えたのか。
調査を進めるうち、僕は過去の新聞に隠された複数のメッセージと、かつて一人の新聞記者が残した痕跡を見つけていく。
水道、食料、財政、公共事業。 国民に成功を約束し続ける東邦という国では、いつしか計画を立てることが成果になり、報告書を提出することが実績になり、失敗を認めないことが優秀さの証明になっていた。
だが、記録の上では成功しているはずの国で、なぜ人々の暮らしは少しずつ苦しくなっているのか。
そして、過去の新聞にメッセージを隠した記者は、未来の読者に何を伝えようとしていたのか。
これは、古新聞好きの高校生が、紙の奥に埋もれた矛盾を一つずつ解き明かしていく物語。
過去の記録を疑うことから始まった調査は、やがて、誰もが信じていた「成功」の正体を暴いていく。
優秀であることを証明し続けた者たちは、いったい何を失ったのか。