『新宿境界録』で、神田川と淀橋を舞台にした回があります。
川って、昔から此岸と彼岸の境目みたいなイメージがありますよね。
だから『新宿境界録』でも、境界が揺らぐ場所として神田川と淀橋を舞台にしました。
ところが、後から淀橋について調べてみたら、「姿見ずの橋」と呼ばれていたという伝承があることを知りました。
行きには一緒だった人が、帰りには姿を消していた――という話。
「消える」「渡る」「境界」という、自分が小説で扱っていたものと妙に重なっていて、ちょっと驚きました。
『新宿境界録』は、消えた場所や忘れられたものが、別の形で街に残っているという話です。
そして橋は、こちら側と向こう側をつなぐ場所でもある。
「人が消える」という伝承が残る橋と、その下を流れ続ける神田川。
消えたものと、残るもの。
こちら側と、向こう側。
今は護岸に囲まれた都市の川で、車で通ると橋だと気づかないくらいの大通りですが、昔そんな名前で呼ばれていたと知ると、少し景色が違って見えるのが面白いです。