第27話

 これは一体どういうことなのか。

 もう一度、新聞を手に取る。私には確かめたいことがあった。

 事故の起こった場所が、私の勤める会社近くのビルであるかどうかを確かめたかった。

「……違う」

 それは、あのビルではなく少し離れた場所の駅ビル改修工事でのことだった。


 姉は、生きていた

 母も、生きていた

 父は――死んだ?


 このことを母や姉は知っているのだろうか。

 急いで姉に電話をかけ、父の死亡記事を見たことを告げた。

「ああ。私も驚いてお母さんに新聞見せたのよ。そしたらさ、同姓同名だって」

「……えっ?」

「すっかり忘れてたけど、あの人まだ六十才になってないのよ。念のため新聞社に確認したんだけど、別人だったわ」

 姉が少し怒ったように教えてくれた。

「別……人……」

「ちょっと、どうしたの? 今朝から何か変よ。何かあったの?」

「…………」

 返事もせずに電話を切った。


 ――嫌な予感がする


 父ではなかった。

 別人だと分かった瞬間、あの夢の中で感じた首の後ろの痛み――チリチリと熱い、あの嫌な感覚に襲われた。

 父だと思っていたときには、まったく感じなかったあの痛み。

 そういえば、私は夢の中で何かを気にしていた。

 姉や友達や母の死ぬ夢と、父の死ぬ夢と、私が殺される夢。


 何だったっけ……

 何を気にしていたんだろう


 私は、私の夢の中で一体何を見たのか。

 分からない。

 いくら考えても、何も思い出せない。

 いつもなら嫌というくらい見た夢を覚えているのに、なぜかまったく思い出せない。


 行ってみよう――あの場所へ

 行けば何か分かるかもしれない


 部屋を出て、急いで車に乗り込んだ。

 まるで何かに導かれるように、私は向かってしまった。大きな桜の木が一本立っている、あの公園へ。

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