夢のおわり

第23話

 会社近くの公園の方向から、誰かが歩いて近付いてくる。


 ――彼だ


 よく知っているような全く知らないような。でも、なんだかひどく懐かしい感じのする彼が、ゆっくり私に向かって歩いてくる。


 ――やっぱり


 やはり、私の見た夢は現実となるのだ。

 何も起こらないかもしれないなんて考えながら、いつもどおり仕事をしていたのが何よりの証拠だ。


 なぜ私は仕事を休まなかったのか

 なぜ私は遠くへ逃げなかったのか


 自分でも分からない。分からないけれど、なぜかいつもと変わらぬ日常を演じなければいけないような気がしていた。

 私は無意識のうちに、いつもと変わらぬ日常を演じさせられていたのか。

 一体、誰に?


 ――彼に


 今、ゆっくりと私に向かって近付いてくる、彼に。

 そういえば由香も、母も、死ぬ前に夢を見たと言っていた。姉も死ぬ前日に夢の話をしていたと、義兄から聞いた。

 彼女たちは、おそらく自分の死ぬ夢を見たのではないか。

 そして見えない何かによって、その夢どおりに演じさせられていたのではないか。


 ならば、私も――

 私もここで待たなければ


 彼に殺される、その時を。

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