第18話

 久しぶりに飲むお酒は、あまり美味しくはなかった。それでも一人きりではない食事は、なかなか悪くない。

 話題はまず、私の身内の不幸からだった。

 みんな無神経なのか、それとも逆に気を遣ってくれているのか、仕事や遊びの話とそう変わらない口調で話している。

 おかげで気楽に話すことができた。

 私は聞かれたことのみに答え、そうでないことはあえて話さなかった。もちろん、夢のことも。

 そのうちに、みんなの注目が中川の社内恋愛の話題に移ったため、私は少し安心して噂話をぼんやりと聞いていた。

 なんだか、とても眠くなってきた。

 お酒を少し飲んだためなのか、久しぶりにお腹がいっぱいになったからなのか。店内の喧騒が心地よい子守唄のように聞こえてきた。


 少し、うとうとしたらしい。

 時間にしたら十秒足らず。


 その間、私は見てしまった。

 右斜め前に座っている男性。

 彼に首を絞められ、桜の木に吊るされる夢を。


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