第21話「わたしメリーさん……親に「将来のため」と貯金されたお年玉を、一時の快楽のために下ろしたくて仕方ないの」


「疲れたわ……」


 全寮制のリリアン女学園では、協調性を育むため相部屋が推奨されている。

 冥子とメリーさんは同じ部屋に入れられて、まあアレだ。


「別に不健全さは感じないわね……」

「超絶美少女の俺に貴様が欲情して、間違いを犯さぬ限りな」

「しないわよ!」


 メリーさんは男にされて、冥介はアレを外して女の子になっている。

 よほどの間違いが起きないかぎり、ヤケクソで投げ捨てるハズだった貞操の危機は守られる。


 冥子は、至って自然に漆黒のセーラー服を脱ぐ。

 メリーさんも、特に何も考えず純白の学ランを脱いでパジャマに着替える。

 ピンクで「NEKO」と文字がプリントされた、キュートでキャットな女子力高めのパジャマだった。

 一方、冥子は己の容姿に絶対の自信があるのか。

 寝間着を身につけず、香水すら身に着けない、丸腰の全裸で部屋を闊歩する。

 メリーさんは、アホ臭そうな口調で言うのだ。


「九條ちゃん。服、着なさいよ」

「メリーに質問だが、貴様は俺の裸を見ても欲情しないのか?」

「当たり前でしょ。ンなの興味ないわよ」


 体は男でも、心は女性のまま。

 なので、超絶美少女の裸といえど、いくら見ても性の対象にはならないらしい。

 むしろ、自分の体が恥ずかしく感じるぐらいだ。

 つーか、


「というか、身体検査は終わったから『剥離剤』ちょーだいよ!」

「クククッ、こいつが欲しいか?」


 全裸の冥子が指先で弄ぶのは、小さなガラス瓶だった。

 メリーさんのちんこを接着する薬剤を溶かせる、有機溶剤の一種だった。

 強引に奪っても良いのだが、メリーさんは冥子に『ちんこの着脱権』を奪われている。

 この世界でメリーさんのちんこを外せるのは、現状で冥子だけだ。

 なので、奴隷同然に従わざるをえない。


 メリーさんは、喉を「ゴクリッ」と鳴らしながら言うのだ。


「……欲しい」

「そうか。こいつが欲しいか。クククッ」


 いつもの残酷な笑みを浮かべながら、全裸の冥子はベットに腰掛ける。

 そして「爪切り」を放り投げてきて、メリーさんに命じるのだ。


「足の爪が伸びてしまった。メリーよ、俺の爪の長さを整えろ」

「はぁ? ンなの自分で切ればい――」

「そうか。なら剥離剤は」

「やる!」


 メリーさんは、わずか2秒で堕ちてしまった。

 爪切りを持つと、ベッドに腰掛けた全裸の冥子の足元にひざまずく。

 全裸で下僕に足を預ける冥子は、扇情的で蠱惑的な悪女の気配が漂っている。

 ひとつ想像して欲しい。

 ベッドに座る全裸の美少女の足元に跪いて、繊細な指先を手に取る光景を。

 そのシチュで見ることが可能な、前人未到の映像を。

 全裸の美少女に跪くという屈辱的な行為、そして全裸の美少女に奉仕する背徳感。

 一部の人には、きっとたまらんだろう。

 まあ、メリーさんは。


「…………」

「おい。無言で淡々と作業してないで、なにか面白いことを言え」

「いや、別にコメントとかないから」


 パチンパチン。

 爪を切りながら無表情。興味なさげだった。

 死ぬほどつまらなそうな表情で、全裸の冥子はガラス瓶を手にとった。

 そして、メリーさんに言うのだ。


「貴様は、本当に面白くないやつだな。玉ついてるのか?」

「あんた、あたしに何を期待してたのよ? ちなみに付いてるわよ。あんたの玉が」

「では、貴様に預けた相棒を確認してみよう」

「はぁ?」

「下を脱いでベッドで横になれ。俺がメリーの股間に剥離剤を塗ってやる」

「嫌に決まってんでしょ!」


 これにはさすがに赤面して、メリーさんが抗議する。


「他人にアレを見られて剥離剤を塗られるとか、男とか女とか性転換とか関係なく嫌だから!」

「俺に逆らうのか。なら――」

「あたし脱ぎます! 脱いで剥離剤を塗らせます! こんちくしょう!」


 涙目でパジャマを脱いだメリーさんは、ベットの上で仰向けになって「まな板の上の鯉」になる。

 限界まで頬を染めて、きゅっっとまぶたを閉じて、全裸の冥子に言うのだ


「さっさとやりなさいよ……」

「任せろ。天井の染みを数えてる間に終わるだろう」

「このド変態がぁ……」


 まぶたを閉じているせいか、より感覚が鋭敏に感じる。

 足を開かされた股間に刷毛が当てられて、ひんやり冷たくて、くすぐったい感触がする。

 近すぎる吐息がメリーさんの男性器に当たって、恥じらいをさらに深めていく。

 冥子が言った。


「緊張してるな。体がこわばっているぞ」

「うるさいわよ……」

「少しはリラックスしろ。天井の染みでも数えながらな」

「ったく……」


 メリーさんが、ガチで天井の染みを数えようとまぶたを開いたら。


  描写できない光景が広がっていた。


 メリーさんの顔面ゼロ距離に、冥子の尻が見えたのだ。


 冥子はメリーさんの股間に、刷毛で剥離剤を塗っている。

 メリーさんの頭に尻を向ける感じで、メリーさんの股間に顔を近づける感じで。

 それは、まさにアウトな姿勢。

 メリーさんがまぶたを開けば、目にするのは冥子のヤバイ箇所に他ならない。


 あぁ、そうさ!

 努力はしたが、これが限界だ!

 これ以上は、全年齢作品では描写できない!


 ……メリッ。


 薄く剥離剤が塗られたメリーさんの股間が、不穏な音を立てた。

 男になって間もないメリーさんは、極限まで頬を染めながら異変を感じていた。


 ――何かが来る

 ――男になった自分の股間に

 ――何かが起きつつある。


 股間に熱い何かが流れ込んで、ムクムクと湧き上がるモノは、新体験の感触。


 メリーさんにも、思い当たる男性の生理現象はあった。

 それは女の子が興味を引いてしまう現象、多くの処女が興味津々な現象。

 メリーさんは、赤面しながら思うのだ。


 ――ヤバい。

 ――あたし勃ちそう。


 男の腕力を信じて、メリーさんは暴れ始める

 自分にまたがった全裸の冥子を、強引に跳ね飛ばそうとするが、


「おっと。転んでしまった」

「ひぎっっっ!?」


 メリーさんにまたがる冥子が、手足を折り曲げる。

 頭に尻を向けた姿勢で、メリーさんにのしかかってくる。


 ポフッと何かが押し付けられ、意識がふわっと遠のいていく。

 ガチで良い匂いがする。ウソみたいに気持ちいい。柔らかくて温かい。


 あたしは知らなかった。

 男の子は、女の子の体をこう感じていたんだ。

 女の子の体は、こうも激しく男子を感じさせてしまうのね――


 メリーさんは、

 世の男子諸君が、女の子の色仕掛けに弱いことを納得しながら、


「のぎゃぁぁぁっ!? やめっっ、来る! 来ちゃう!」

「ほぉ? メリーよ、いったい何が来るのだ? 教えてほしいものだ」

「この変態がぁぁぁ!」


 女でありながら男の性に目覚めてしまった、メリーさんの股間から。

 ――メリメリっ

 何かを力まかせに剥がすような、不穏すぎる音が聞こえる。

 それと同時に、突っ張るような痛み。

 狭い空間で何かが膨張したような、押し固めたものが強引に膨らんでいく痛み。


「ひぎぃぃぃぃっ!? 痛いっ!? 痛い痛い痛いっ!?」

「クククッ、もう少しだな」

「見ないでぇェェェ! 嫌なの! マジで洒落にちょっっっ……ッ」


 メリメリッ!

 メリメリメリメリッ!

 メリーさんのアソコ、ゾウさんになっちゃった!

 ゾウさんが、長いお鼻を「ぱぉぉ~ん」としちゃった!


   ※↑これはイメージです。


 こうして――

 女の子になった冥子と、男の子になったメリーさんの。

 ドキドキすぎる、女子校同居生活は始まった。


 その日の夜――

 メリーさんは、いつまで経っても小さくならないアレに困りまくって。

 ベットの中で、


「ひっぐ……コレ……なんなのよ……」


 処理方法が分からなくて、一晩ずっとすすり泣いていたという。

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