第25話 ゴールド劇場
鮮やかな水色で長袖のポロシャツに、青いジーンズ姿でマンションを飛び出した。後ろのポケットには一万円が二枚、二つ折りで忍ばせている。小遣いとしてヨツヤさんから貰った。これから毎月、決まった分だけ渡すと言われた。これが誰からの小遣いなのか教えられることはなかった。それはそれで僕としては問題ない。人からの有り難みに感謝して、今は今をがむしゃらに生きようと思ったからだ。返さなきゃいけないのは、返せる時に感謝しなさいとヨツヤさんから教わった。
「背伸びしたって無駄な時はあります。今が無理なら、素直に相手からの恩を大切にしなさい。坊ちゃんは私たちが持っていない若さと
ヨツヤさんから聞いた話しを確かめたいと、僕は僅かな時間を無駄にしないようある場所へ向かった。伊勢佐木町の隣、関内に昔からある劇場へ足を運んだ。ゴールド劇場という名前の映画館。そこにアゲハさんと親しい人が居ると教えてくれたのだ。アゲハさんを昔から知ってる人物で、今でも映画館で働いている人物だった。この辺りの界隈では、収集家として有名な人らしい。
映画館で働きながら何かを集めているのかと、もちろん僕はヨツヤさんに訊ねた。だけど返ってきた答えは、自分自身で確かめなさいと言われた。何でもいいから、自分の足と目で確かめることが真実に近づく。そんな事を言うヨツヤさんに、僕は素直にその通りだなーーなんて思うのだった。
「だから俺っちの所へわざわざ来たのかよ。坊主、おめぇさんは知りたいわけだな。俺たちのアゲハを……」
これが山川さんと初めて交わした会話だった。そしてこの後、貰ったお金の意味を知ることになった。
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