第6話 何の話なの?

 私と菅谷は小鹿野さんの家の居間に上がって、丸いちゃぶ台の前に座って小鹿野さんを待っている。

 広い和室の居間は、これも広い土間にガラス戸1枚で隣接して、その反対側にはふすま1つ隔てて繋がる和室があった。

 小鹿野さんは家に入ってすぐ、奥の和室へ行き仏壇に手を合わせ、それからお煎餅を盛ったお皿を持ってきて「すぐにお茶れるから、ちょっと待ってて」と言って2階へ向かった。

 ほどなくして、制服からTシャツとジーンズに着替えてきた小鹿野さんが階段を降りてきて、台所へ入る。

 土間では犬のタローくんが、顔は小鹿野さんを追って台所を向いて尻尾も振っているけど、横目でこっちを警戒してる。なんてヤツだ。

 フン! 犬と同じレベルでケンカなんてしないもんね。

 ほどなく台所から美味しそうな匂いがしてきて、あれ? 何かご飯食べさせてもらえるのかなと期待してしまう。でも小鹿野さんは湯気の立つ片手鍋を持ったまま、まっすぐ土間に向かい、鍋の中身を犬の皿に移した。

 尻尾振りながら皿に口突っ込んでガッつくタロー。でもこいつ、食べながらチラとこっちを見て、明らかにフンと笑った!

「ごめんなさい、遅くなって」

 小鹿野さんはお盆にお茶を3人分れて持ってきた。ちゃぶ台にお茶を置くその背後の土間にタローの勝ち誇った眼がある。

 犬には手作りのご飯が出て、私にはお煎餅とお茶……。

「三宅さん? どうしたの?」

「え! あ、ううん、なんでもない! で、なんだっけ?」

 右手で額を押さえながら菅谷が言う。

「三宅、お前関係ないから帰ってもいいんだぞ」

「うっさいわね、関係無いわけ無いでしょ! で、何の話なの?」

 今度は両手で頭を抱えて、菅谷が言った。

「わかった、これからお前にも判るよう、簡単に順序立てて説明してやる」

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