接続章

第十八話「最終章 intro」

接続章/


 静止した世界は、徐々に生命の時間さえ止めていく。もう既に、世界中の生命活動すら時間が停止している。死んでいるわけではない、時間だけが静止しているのだ。


「再現ができなかったんだ、ここまでしか、な」


 神崎カイはそう呟き、その言葉を聞き、風宮アケミは衝撃に目を大きく見開く。


「なによ、それ。まるで、この世界を作ったのはアンタって言ってるみたいじゃない……」


 嘘だ、冗談だったんだ、と。神崎カイがいつ言い出すのか、風宮アケミは待ちわびていた。コイツはそういうことをしれっというやつだ――と。そう彼女は信じたかったのだ。


 だというのに彼は、淡々とした口調でこう言った。


「そうだ。俺がこの偽りの世界を作り上げた」


 足音もなく、彼の背後に銀髪の少女が現れる。


「私の楽園を、神崎君が作ってくれたの」

「黒咲、アイ――」


 黒咲アイ。風宮アケミは、その名を初めて呼んだ。


「ねえ、神崎君。この際だから真相を話してあげたらどう? それで、どちらにつくのか決めてもらいましょう」

「…………」


 神崎カイは黙ってしまう。ただただ、険しい顔つきをしたままで。


「……ちょっと、どういうことよアンタたち。言いたいことがあるのなら、もっとはっきり言ったらどうなの?」


 風宮アケミの問いに、黒咲アイは欠けた月のように口を歪める。


「私ね、神崎君と喧嘩しているの。まあ、意見の相違というやつなの。だから、貴女には決めてほしいの」


 風宮アケミが気付いた時には、黒咲アイは既に彼女の背後に立っていた。

 そして、彼女が驚きの声を上げるよりも早く、黒咲アイは耳元で囁いた。


「私と神崎君、どちらにつくのかを――よ」


 そして彼女、風宮アケミは知ることとなる。この、『偽りの楽園フェイク・ユートピア』と呼ばれる世界がどのようにして生まれたのかを。そして、自分に能力が発現した理由さえも――――。


接続章、了。第六章に続く↓

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る