出会い

出会ったきっかけはネット。最近のあるあるパターン。その当時私は元カレと別れ、でもこの人とズルズルいってしまうのか、と重い気持ちで毎日を過ごしていた。元カレは双極性障害(いわゆる躁鬱病)で、半年くらい一緒に暮らしていたのだが、暮らし始めてすぐに「これは愛情ではない、情だ」と思うようになっていた。それは恋愛ではなく保護者のような感情で、毎日引きこもっている元カレの世話をしていたようなものだったからだ。別れてからも、何かと頼られ、毎日がクタクタで、私も寝たきりになっていた。

そんなとき彼が現れたのだった。


最初は彼の単なる好奇心だった。年上の女とちょっと話をしてみたい、程度の。

私も遊びなんだろうなぁ、なんて考えていた。

けれど、会う前にメッセージのやりとりをしていた時に、私は既に恋をしていたのかもしれない。その頃私は無職だったのだが、自分は結婚には縁のない人生だろうな、と思っていたので、働かなくては、という思いと動けない自分の症状について葛藤し、焦燥感を感じて生き続ける日々。周りは皆、「ゆっくりやればいいんだよ」と言ってくれるのだが、それがまた焦りを呼ぶ。そんな時にまだ見ぬ彼が


「働けないなら働かなくてもいいんじゃない?」


とメッセージをくれたのだった。

それは今まで出会ってきた、男女年齢関係ない全ての人からは与えられない、単純で、しかし私を救ってくれた光だった。そしてそれが私にとって、彼が特別な存在になった瞬間だった。


そしてそのままするすると実際に会う機会が訪れた。待ち合わせは池袋。期待と不安が入り混じりながら彼を待つ。私は不摂生のせいでひどく肥っていて、容姿にも自信はない。メールが届いた。電車に乗り間違えたと。この時点で、やっぱりからかわれていただけだったのか、と少し落ち込んだ。

でも彼は遅れながらも到着したと、電話をかけてきた。喫茶店の中から彼らしい人を探す。電話している人は…あの人?


……若い。

年齢を聞いていたけれど、予想よりずっと若く見える。これは終わったな…と諦めつつのご対面。

とりあえずご飯でも食べようか、と喫茶店を出て歩くと、デパートをひやかしてみようということになった。季節は夏のセール時期。色々見て回り……

これ可愛いな、と言ったパスケースをひょいと取り、レジに向かう彼。え?え?と思っていると、「誕生日プレゼント」と言ってぽん、と私に渡してくれた。何この超展開!?と多少混乱しながら食事へ。味がわからない……


その日は夜遅くまで沢山話して、お互いの元カレ、元カノの相談などもした。あの日、彼は大変具合が悪かった、と後で聞いて申し訳なく思ったくらい喋り倒した。タバコも恐ろしい勢いで吸った。楽しかった。本当に楽しくて、一度きりのデートだったとしても悔いはなかった。

だから次回どうする?という話になった時は本当に嬉しかった。


彼との会話で、「運命信じます」というネタ話があったのだけれど、私は初日から運命を信じたくなったのだった。それほどハッピーな1日で、それが私たちの出逢いだった。

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