決着の後に

 観客席から喝采が上がる。

 爆発によってノイズが混ざった司会のアナウンスがアリーナ内に響く。

 その瞬間、今までの緊張感がプツリと切れたように春市とフィアはその場で崩れ落ちた。

 興奮冷めやまぬ会場の隅から教師陣が飛び出し、春市を初めとした両チームの負傷者全員が担架に乗せられて運び出される。

 医療技術の最先端を誇る学院の医務室ならば、最適な処置が施されるだろう。

 誰もいなくなったアリーナ。

 それを前に、政府関係者などの来客者たちが騒ぎ出した。

 先の戦闘でみせた才能に、各関係者一同が鼻息荒く両チームの情報提示を学院側に求めている。

 そんな光景を見ながら、この対戦を仕組んだ張本人である水無瀬麻耶は、誰にも気づかれないように自らの両腕を無理矢理に押さえつけた。先ほどの最後の攻防。否、この試合で起きた戦闘全てが明らかに学生離れしていることに、麻耶は疑念を抱いていた。

 水無瀬麻耶は風花学院の教師だ。全て、とまではいかないが、それでも実力在る生徒の力量は正確に理解している。

 だからこそ、ある疑問が麻耶の思考に浮かぶ。


 ――久瀬宗一郎に、あれだけの実力と魔力が在ったのか。


 答えは否。少なくとも数日前、今回の火種となったトラブルの段階では、麻耶は宗一郎にそこまでの力量も魔力も感じ取れていない。


「まさか、本当にあのジジイの……」


 無意識に、麻耶の唇が言葉を紡ぐ。数日足らずで劇的に能力が伸びる方法は存在しない。

 ――ただ一つの可能性を除いて。


「まさか……な」


 長年の特異能力者としての直感が訴えてくる。

 ――嫌な予感がするな。

 その直感に逆らうことなく、麻耶は会場をそっと抜け出した。

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