幻想は現実の上にのみ築かれる

戦争を題材としている分、この小説には戦における最も重要な部分、即ち『平時の備え』を確りと描いている。戦いとはすべからく始まる前に決まるものであるが、その辺りの軍備に関して濃厚且つ現実的な知識に基づいた描写が素晴らしいと思う。

更に、この作品はファンタジーである。華印といった空想的な要素を、確固たる現実味を持たせるほど練り上げて、戦争に違和感無く混ぜ合わせ、その上双方を生かしきっているのは正に驚愕の一言だ。

加えて、戦争では人も死ぬ。ありふれた英雄譚《ボーイミーツガール》では無い、暗い展開も含まれている。だが、それでこそだ。彼は王であって英雄ではないのだから。

剣と魔法、そして政治の物語。読まずに寝るには、勿体ないぜ?

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