王政・騎士に目を向けた、魔法がありながらのリアルさ

まず、設定の奇抜さに拍手を送りたいです。
考えそうで皆がおそらく敬遠していたであろう、
主人公本人が眠りで時間を超えていくという設定。
これはかなり素晴らしいと思います。

なぜなら、まず、現在どうなっているかを、
何も知らない読者がヴラマンクと共に理解していける。
そして、どうなったかをワクワクして読める。
逆に敬遠するであろう理由は、扱いが難しい。
下手をすると読者が置いてきぼりになりやすいからです。
しかし、そこも計算の上で進めている節がある。

そして、魔法のような概念がありながら、
かなりリアリティを詰め込んでいると思います。

まず、戦闘。剣術の戦闘ですが、シーンを想像しやすく、
また、おそらく著者もある程度やったことがあるのかな?
と思わせるリアルさを感じました。(突きの腕の伸びなど)
私もドイツ剣術を体験で受けてはいましたが、
何かしら経験していないと分からない細かい所も、
さらりとわかりやすく描かれているように思います。

さらに、王政・国教などのリアル追求。
著者は実在の西欧中世をきちんと調べていると思います。
(これは私が西欧中世研究会に所属しているので、
なんとなく詳しくなったため、たまたま気づいたのですが)
騎士としての在り方や、王政の運び方、
国教のあり方と腐れ具合(笑)。
農民が養える騎士の数や民の数、
調べた上で、結構プロット練って組んでますね!

それがきちんと為されているからこその、
繊細な描写や魔法表現が光っていると思います。

こちらも目を離せませんね。
ゆっくりと先を楽しませて頂きます!

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