第2話
「くっそ…」
「おーおーどうした」
家に帰ってきたお兄ちゃんはこれまでに見たことないくらいの悔しそうな顔をしていた。
「新入生がバスケ上手すぎるんだけど」
「あー…誰?名前聞いたらわかるかも」
「…た、た…あ、汰斗?って言ったっけ…」
あぁ汰斗か…ん、汰斗!?
「え?そんな上手いの?」
「余裕で俺らと同レベルくらい」
汰斗は1番仲が良い男友達。小学校の頃からバスケはやってたけど、まさかそんなに実力があるとは…
「…でもさすがにレギュラーとられることはないんじゃない?お兄ちゃんもうすぐ引退だし」
「それがさ、顧問が言ってたんよ。『実力ある奴を使わないのはもったいない』って」
お兄ちゃんは半年くらい前にバスケを始めた。それまではバレーを頑張っていて、経験者だった私も、よくお兄ちゃんと一緒にバレーをしていた。
6ヶ月。入部してたったの6ヶ月のお兄ちゃんが選ばれた理由は’身長’だった。自慢ではないが、お兄ちゃんの身長は学年1高いらしい。それを見込んだ顧問が、’とりあえずデカいの入れとけば勝てるだろ’ってお兄ちゃんをスタメンにした。
「…俺…1番下手だから外されるかも」
お兄ちゃん自身も、自分が実力で選ばれていないということは痛いほどわかってるようで。
だからこそ、新入生の中で1番背が高い…しかも実力がある汰斗にスタメンを奪われるんじゃないかと、凄くメンタルが弱くなっているんだ。
「…しかも汰斗って良い奴だし…周りにも慕われてるし…」
そんなことを言ったらお兄ちゃんだって、生徒会長っていう時点で十分周りに慕われてるじゃん。
そう言いたい気持ちをグッと堪えるも、いつにも増して弱気なお兄ちゃんを見ると、何故か物凄くイライラする。
「…私はそんなに汰斗のこと好きじゃないけどな」
言わなくてもいい言葉まで口にして、あぁ本当に何やってんだろう。
それでもお兄ちゃんには元気を出してほしい。中退練までもうすぐなんだから、今モチベを下げてどうする。
「…ほんと?結衣がそう言うなら…」
お兄ちゃんはパアッと顔を輝かせると、「ほんとに好きじゃない?」と再度確認してきた。
「…うん、ほんとほんと」
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