硝子の靴を追いかけて④

カーターに確認したところ。

私の相棒は、第6王子のジュリア様というらしい。

第1王子マルス

第2王子ヘンリー

第3王子シルヴァ

第4王子マシュー

第5王子ダン

すべて異母兄弟で、性格も容姿もバラバラだ。

王様の容姿や豪胆さを最もよく引き継いだのはマルス王子で、次期国王候補と言われている。

ヘンリー王子は、柔和な表情の裏に狡猾さを備えているリアリスト。

シルヴァ王子は、寡黙で何を考えるているのか読みにくい。

マシュー王子は、好色で軽薄な性格をしており、自由人と呼ばれている。

ダン王子は、ジュリア王子のライバル的な存在らしい。

生まれた年が同じで、学力や体力も拮抗していて周りからも勝手に比較されやすい。

ジュリア王子は、自身の事を含めて客観的に話してくれた。

「犯人の目星はついてるの?」

「いや、全くついていない。正直、情報が足りない」

「序列でいったら、次男のヘンリー王子が怪しいんじゃないの?」

「いや、そうとも言えない。国王は次期国王を投票で決めると生前から公言していた。もちろん、マルス王子の信用を失墜させる材料があるのなら意味はあるが」

「そっかぁ、動機は他の王子を蹴落とす為って感じかぁ。それだと国王は浮かばれないわね」

「父上は本当はマルスを王にしたくなかったんじゃないかと思う。だから、わざわざ投票なんて方法を考えた」

「マルス王子にも動機はあるってわけね」

ジュリア王子を信用した訳ではないが、今一番頼りにするなら彼だろう。

他の王子に罪を擦り付けられたらたまったものではない。

「私は兄弟の周辺について調べられる限り探ってみる。貴女にお願いしたいのは明後日のマリーのお茶会に参加して硝子の靴の持ち主を探して欲しい」

「お茶会?」

「そう、王子か王女が推薦した者しか参加できない秘密のお茶会だ。重要なネットワークだが男子禁制だから私は行けない」

「でも、もしかしたら犯人もそこに居るかもしれないってこと?」

「可能性は高い。だからこそ、そこで得られた話は貴重なんだ」

「わかったわ。危なくなったら助けてくれるんでしょう。王子様?」

「もちろん。大切な姫君ですからね」

私には、王子と出会った時の記憶がない。

彼の言葉に嘘はなさそうだが、かといって恋愛感情を抱いている様子はない。

私の方が一方的に王子様を慕っていたのか、それとも地位を利用しようとしていた?

王子様の事以上に、私は私自身の事をもっと知らなければならない気がする。

そして、なんとなくこの物語が解決しなければ私は夢から脱け出せないような気がしてきた。

私は誰なのか。

そして、本来の人格である貴族の娘はいったいどうなったのだろう。

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