硝子の靴を追いかけて③
「ご機嫌よう」
合っているのか分からない漫画の知識で挨拶をする。
ぎこちないお辞儀をして、王子様を迎えいれる。
金髪の碧眼、絵に描いたような王子の風貌だった。
まだ少し幼さが残る顔立ちが気になった。
私のストライクゾーンではない。
王子様という割には、身体もすこし華奢な印象だった。
「すまない。こんな時間に」
「えぇ、本当に」
目を合わすことなく、少し強気に対応する。
失礼になりすぎてもいけないが、年下のようだったので自然にそうなってしまった。
「今日じゃなければならない理由があったんだ」
「約束をしていたからですか?」
「それもある」
歯切れが悪く、要領を得ない。
「分かりました。用件を聞かせてください」
「舞踏会の日に、我が父アンティグアの暗殺を策謀したものがいる」
「暗殺?」
物騒な単語がでて、驚く。
「そうだ。あの日、私と一緒にいた君を含め12名の王子と娘達の中に犯人がいる」
「なぜ?それ以外にも給仕の人や警備の人もいたのでは?」
「もちろん、絶対にないとは言えないが父上の部屋には犯人の者と思われる硝子の靴が片方だけ残されていたんだ」
「が、硝子の靴?」
「私目線で、今確実に犯人ではないといえるのは君だけだ。だから、君の協力を得たい」
「分かりました、でも証拠は硝子の靴しかないんですか?」
「靴はあくまでも、最後の物証として他にも証言や当日の人の流れを確認する必要がある。」
「うーん、一緒に犯人を探すんですね」
「それもあるが、私自身も暗殺を指示したと疑いの目を向けられている。その無実を証明してもらえればいい。」
なるほど、わざわざこちらまで足を運ぶ理由は理解できた。
けれど、残念ながら私には舞踏会の記憶はない。
都合よく身体の記憶を引き継ぐような配慮はされていないらしい。
ということは、この王子様が暗殺の犯人という可能性だってありえる。
「すみません、私もずっと貴方様の事を見ていた訳ではありませんので」
「では、貴女についても同じ事が言えますよね」
おっと、ただの坊っちゃんという訳ではないようだ。
「それは、脅しですか?」
「いやいや、そんな訳ないでしょう。貴女と私は運命共同体なんですよ」
彼は私と一緒にいたというアリバイが欲しいのか?
いや、それはおかしい。
「犯人は硝子の靴を残していったんですね?」
「そうです。」
「なら、王子と娘は結託して王様を暗殺したとお考えですか?」
「その通りです。私の兄弟の誰かが王様を殺害したと考えています。」
「だったら、尚更私は関係ないのでは?」
そんなキナ臭い話に、巻き込まれたくない。
「貴女は既に巻き込まれているんですよ。私がこう考えるのと同様に他の兄弟達も、私と貴女が結託して王様殺しを行ったと考えるのが自然です。」
「はぁ、分かりました。私が自らの無実を証明する事で貴方にもメリットがあるんですね」
「その通り。やはり聡明でいらっしゃる」
生意気な王子様だ。
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